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ISPS HANDA ガツーンと飛ばせ ツアートーナメント 2021
豪打と技のデパート。池村寛世が初優勝をつかむまで
18歳でのプロ転向から9年目。
今まで先輩プロたちから「なぜまだ勝てないか」と、疑問の声が多かった。
同じ鹿児島出身で、いずれも「日本オープン」でツアー2勝の稲森佑貴が言う。
「飛ばし屋で、スペックは僕より遙かに良いものを持っている。グリーン回りからハイブリッドで寄せたり、直ドラしたり。技術の引き出しを何でも持っていて、逆にうらやましい」と、同郷の後輩を褒めていた。
クラブセッティングはドライバーの次にすぐ2I→3Iと続いて4I〜9Iとウェッジが4本。パターは、週の水曜日にひらめいてきゅうきょ投入したマレット型。
スプーンを入れないかわりに、フェアウェイからだけでなく、ティーイングエリアでもドライバーの直ドラで、器用に距離を打ち分ける。
この日も4番、8番と10番のティショットでティアップをしなかったといい「直ドラは左に引っかけるミスが出にくいので。みんながスプーンで刻むホールで使ったりします。ティアップした時の飛距離はキャリーで300ヤードくらい、直ドラだと280から290ヤードくらい」。
さらに、250から280ヤードの距離は2アイアンで対応。
確かに、長いクラブを使いこなすには、高度なショット技術が必要だ。
誰もが認める才能を持ちながら、なぜ初Vまで9年を要したか。
最終日に2つ前で上がってきた稲森が後ろで回る池村を心配していた。
「今日、どういうゴルフをしているか分かりませんが、彼は諦めるのが早くて。『ダメだ』ってすぐに言っちゃうので。そこだけじゃないか」。
今週もV争いに加わった2日目からすでに「ダメだダメだ」と連発していた。
本人も「大事な場面でミスするとイライラしたり、ヘコむことが多くて。そこを直さなければダメなんだ」と自覚し、前夜はタイガー・ウッズの動画を見て勉強。
ウッズが次の打点に行くまで口を開けて歩いているのは、緊張を緩和するためと知り、さっそくプレーに取り入れたりしたという。
同学年の植竹勇太との5差を追った最終日は5番のパー3で3パットのボギーが先行。
停滞ムードで前半を折り返すと、10番では2メートルのチャンスを逃して自分へのダメ出しと、あきらめがまた出かけた。
それでも、献身的に支えてくれたキャディの坂口琴音さんの励ましも支えに11番で1メートルを沈めて「またここから」。
気持ちを立て直すと一気に4連続バーディ。瞬く間に追いついた。
16番から4メートルのチャンスを立て続けに沈めて今度は連続バーディ。
大逆転に成功した。
2打差をつける通算17アンダーで決着し、坂口さんの肩に顔をうずめて大泣きした。
「ゴルフは仕事。のめり込みたくない」と、オフはサッカーやスノーボード、ボルダリングとつい他スポーツに浮気をしてしまうがそれもまた、身体能力と適応能力の高さを表している。
鹿児島産の幻の焼酎「魔王」の原料となる「紅はるか」を栽培するサツマイモ農家の長男に生まれ、稼げなければ実家を継ぐ覚悟で2013年にプロ入り。
同世代に次々と先を越されて焦りもあったが、シード選手に定着して3シーズン目に悲願を達成。
表彰式の前に、選手みんなで鑑賞した能舞台の会場で、大勢から祝福を受けた。
「みんながおめでとうと言ってくれるのがすごく嬉しい。これからも、天狗にならずにやって行きたい」。
才能溢れる26歳が、勝って兜(かぶと)の緒を締めた。