屈指の飛ばし屋が、ハングリーな逆転Vを達成した。
米のチャン・キムが、通算7勝目を今季3勝目で飾って賞金1位に浮上した。
3打差の9位タイから出たこの日は前半5つのバーディで、同組の片岡と接戦を開始した。
もつれにもつれて入った最後のパー5(560ヤード)は自慢の豪打に安定感を加えて、「4日間で一番いいショットができた」と、フェアウェイ真ん中に。
左の林に入れた片岡を横目に、215ヤードの2打目を5Iで、5メートルのイーグルチャンスにくっつけ圧倒した。
16ー17年と19年の飛距離日本一だが現在は幡地隆寛に次ぐ2位でも気にしない。
4番と12番の計測ホールも「今はドラコンより堅実なショットを意識している」と、紳士に言ったが、4日平均306.13ヤード(3位)も飛ばせば、十分である。
後半から片岡との一進一退の攻防にも「片岡選手はファイター。素晴らしい選手」と、感心しながら「自分も常に、相手に自信があるように見せることも大事」と、ついに百戦錬磨のポーカーフェイスを崩すことはなかった。
コロナ禍の今季、厳しい入国制限をくぐって、いち早く日本に戻ってきた海外勢の一人だ。
昨11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」から加わり4位、今大会で5位と来て、まず2020最終戦の「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で今季1勝。
今年は5、6、7月のメジャー参戦を経て8月からまた戻ると、10月の「バンテリン東海クラシック」で同2勝目。
絶え間なく、賞金を積み重ねて「去年のうちに日本に戻ってこれて、本当に良かったです」と、喜ぶ。
キャリアベストの賞金3位に終わった2017年はひどい腰痛で、賞金1位で迎えた終盤の残り5戦のうち、最終戦を含めた2戦で棄権。涙をのんだ。
しかも翌18年は、ついに1戦も出来ない苦しみも味わったが今季は、友人のススメで取り入れたという半・断食のおかげでケガ知らず。
「午後1時から夜7時までしか食べない。それ以外の時間は水かコーヒー、紅茶しか飲まない」と、6月の全米オープンから始めて4月の開幕時は112キロあった体重が、3日前の計量では97キロ。
15キロ減で「朝の目覚めもよいし、体の調子もよい」と、すこぶる快適。
元来の豪打に切れ味を加えて、前週の賞金4位から1位に浮上した。
表彰式ではすっかりスリムに変身した体に、賞金レースを争う前年覇者の金谷拓実から、優勝ジャケットを着せかけられ、「この1勝で弾みがつく」と、気持ちも高まる。
「とにかくいま出来るのは、ベストを尽くすこと。残り2戦で勝って結果、賞金王になれればいい。断食も、最後まで続けますよ!」。
ハングリーに邁進する。