現在、平均322.60ヤードでダントツの飛距離1位を走る河本が、ティショットでドライバーを握る際の目安は、ちょうど落ち所に「直径55ヤードのフェアウェイ幅があるかどうか」。
“直径”と円で捉えているところが独特で、学生時から習う目澤秀憲コーチの指導だそうだ。
55ヤードを切るホールでは迷わず1W以外のクラブを選択。
「連ランでそれを全部チェックして、番手を決めてある」といい、たとえば40ヤード以下の難関7番などでは、迷わず2アイアンを持つなど「フェアウェイに打たなければという意識づけを、昨年から練習してきた」と、話す。
一方、フェアウェイキープで6年連続1位を続ける稲森は飛距離がない分、人並み外れた精度で勝負。
ほとんどのホールでドライバーを持つティショットで、狙いを定めるのは約3ヤード間隔で、順目と逆目の交互に刈られるフェアウェイの順目の部分だ。
ティーイングエリアから見ると、順目は逆目に比べて明るく見える。
たとえば、木や遠くの建物で打ち出しのターゲットを取るのと同様に、「あの、3本目の明るくなったところ」というように、順目のわずかな幅を狙って打つ。
「100%の確率で、確実にそこに落としてランを稼ぐ。それもひとつの方法です」と、マネジメントも日本一曲げない男ならでは。
「きょう河本くんは、なんなら2アイアンで僕のドライバーより飛ばした」と、飛距離の差を見せつけられても「でしょうね~」と、諦観。
「何もおかしいことはない」と達観し「そんなの、とっくの昔に食らって慣れています」。
以前、PGAツアーでブライソン・デシャンボーと同組で当たって受けた洗礼と免疫は、ちょっとやそっとで薄れない。
曲げないショットを駆使して今秋、ひそかに偉業も達成していた。
9月の「ANAオープン」3Rのインスタート18番から、翌週の「パナソニックオープン」FRの3番まで続けた85ホール連続ボギーなしは、横田真一が2003年の「ANAオープン」2Rのインスタート14番から、翌週の「アコムインターナショナル」2Rのインスタート6番まで続けた83ホールを抜いて歴代1位を更新(1999年以降の記録)。
卓越した安定感なら、もはや稲森の右に出るのは誰もない。
「そう思っていただけるのなら光栄ですね」。
昨年は5位入賞で大会2度目のトップ10入りと、「コースは好き。去年もそこそこいいところでやれた」と、相性は悪くない。
日本一の飛ばし屋と、曲げない男のV争い。
どっちが勝つか。