プロ10年目の初シードを確定して会場に入った。
31歳の田村光正(たむら・みつまさ)が、週またぎで“2日連続”の60台をマーク。
6バーディ、1ボギーの「67」。5アンダーの3位タイ発進したきょうイチの手ごたえは、「さらっとパーで切り抜けられた」というパー3の2番と11番だ。
2番のティショットで使った4アイアンと、11番で使った5アイアンが、先週まで田村の肝。
「すごく苦手な番手で。40とか50ヤードも離れて飛んでいく」。
それが急に、ピンに飛ばせるようになった秘密は硬(カタ)→軟(ヤワ)へのシャフトチェンジという。
「先週のダンロップフェニックスでスペックダウンをしてみたら、それだけでめちゃくちゃ良くなったんです」と、見違えた途端に、「これはあるかも?」と、ひそかに初Vすら予感ができるまでに。
先週の日曜日にキャディさんと決めたという秘密のゲームプランも奏功しているという。
「その通りにやったら6アンダーで回れて、今日も5アンダー。このプランで優勝争いに絡めるのか、または全く通用しないかいま実験中。今後にどうつながるか」と、今週はますます楽しみな初日の好発進となった。
ほとんどがエスカレーターで大学に上がる地元兵庫の関西学院高校を出ながら、ゴルフの強豪、東北福祉大へ進学。
同期の松山英樹の努力を間近で見られたのは何よりの収穫だったが、2013年のプロ転向時にQTサードで敗退→断念→ベルトの会社に就職→でも半年で退職→再びツアーを目指した異色プロだ。
「わざわざ足を運んでくださった方に笑顔で帰っていただきたい」と、プレー中のパフォーマンスが好評で、この日もプレー後のサインエリアで熱心なファンに「優勝してね」と、激励を受けていた。
2020年の特別QTで、練習日にコロナに感染してから人生観が一変。一念発起のトレーニングでマッチョに変身し、今季本格参戦した。
3日目に7位につけた開幕戦「東建ホームメイトカップ」で「ファイター・ミツと呼んで」と、アピールしたが、今夏第二子の出産を控えていた奥様を支えて家事も担当。
「どんなけ試合で疲れて帰っても、風呂掃除をしないといけない状況で鍛錬や、と歯を食いしばって風呂を洗う。きついけど、これが強くなる要因や、と思って掃除に励む」などと、インスタグラムで持論を展開するうち周囲から、「鍛錬先輩」のあだ名で親しまれるように。
若手の台頭が進む今季、初シード入りを果たした一人。
紆余曲折を経た31歳が、いま育ちざかりだ。