新・賞金王が首位を快走している。
2日目を終えて、通算11アンダーはただひとりの2桁アンダーで、2位の蟬川、金谷に2打差。
中島啓太(なかじま・けいた)が元気にV争いを続けている。
5メートルのイーグルチャンスを打った17番ほか5つのバーディもさることながら、崖下から戻してしのいだ1番や、逆目の奥ラフからピンにくっつけ、パーを拾った14番こそ、新キングの真骨頂だ。
今季最終戦で今季4勝目を飾れれば、史上5人目(6例目)の2億円を達成する。
でも、「すでに2日目も金谷さんと優勝争いをやってる気分。ずっと金谷さんと回りたいので。明日も一緒に回れるので凄く楽しみ」と、一番のモチベーションが、大好きな2つ上の先輩なのも相変わらずだ。
当週は、すでに月曜日に持ち上げてきた。
シーズン最終戦でも、100キロのバーベルを担いでから会場入りをするのが常という。
「イメージ的には、少し軽めのお相撲さんか、ラグビー選手を一人担ぎ上げてから来る感じですかね」とはJGA強化スタッフの栖原弘和・フィジカルコーチ。
朝は20キロのバーベルの左右に20キロの重しを2個ずつ。
それを肩に担いで1セット3回のスクワットを2~3セットしてコースに来る。
オフウィークにはさらに20キロの重しを追加し、計120キロを3~5セット。ピーク時は、試合中でも週に2~3回のペースで負荷をかけて臨んできたそうだ。
日体大に入学してすぐ本格的に筋トレを開始した頃には、この半分も上げられなかったという。
でも、今ではどんなにハードにやっても筋肉痛知らず。
誰もが練習量を減らすか、または温存を優先し、まったく控える選手も出てくるのが終盤戦だが、中島のルーティンは今週の最終戦でもほとんど変わらず、トレーニングとストレッチ、ケアで仕上げたあと、スタートの約1時間ほど前からパット練習を開始し、アプローチとバンカー。
次いで打撃場では、60度のウェッジから打ち始めて52度⇒46度⇒9番⇒6番⇒4番⇒ユーティリティ⇒スプーン⇒ドライバーと、順々に番手を上げて、最後動画チェックで完了。
ティ前で、栖原コーチとグータッチをかわし、清々しく出て行くと、また賞金2位の金谷と切磋琢磨し、颯爽とV争いを繰り広げて首位キープ。
いよいよ最終戦でもまだどこかに余裕すら感じさせるのは、終盤戦から逆算し、「夏から秋にかけて体力強化を行いました」という栖原コーチの戦略によるところが大きい。
「上達のために球を打つことは大切ですが、ゴルフが上手くなるための方法は球を打つことだけではない。
目先だけでやみくもに鍛えたり、球を打ったりではない逆算尽くしの好循環が、新時代のキングを生んだ。
もっとも2週後には、賞金1位の資格で掴んだ米二部「コーンフェリーツアー」の予選会も控えており、今年の仕上げはまだまだ先。
「今シーズンが終われば、また少しハード目なのを始める予定です」と、栖原コーチ。
100キロものバーベルも「きょうの夕方か、明日朝にはまた・・・」とは、中島本人だ。
最終戦でのV争いも、無尽蔵の体力あってこそ、なのである。