Tournament article
ダンロップフェニックス 2000
「ボギーパットでも笑っていたよ」
スタートから、よく笑い、よくしゃべった。
「僕は、普段の生活からそう。おとなしくしていることがない。逆に笑いが止まると、ピンチが来る。だから今日は、ずっと笑っていようと決めていた」
最終日は、2位と6打差からのスタート。
とはいえ、後ろに控えているのは、英国のアンドリュー・コルタート、アメリカのボブ・メイなどいずれも世界で活躍する実力者たち。それに、大会は、歴代優勝者に世界各国のビッグネームが並ぶ、大舞台だ。
「キャディにも昨日のうちに何かおもしろいネタを考えてきてと言っておいたんです。プレー中は、なんでもいいから話しかけてねと、スタート前から頼んでおいたんですよ」
プレー中に見せるこぼれるような笑顔や、たわいもない会話は、「プレッシャーの中でもできるだけ、フラットな気持ちで戦えるように」との、片山の作戦だった。
「だから、今日はボギーパットの前でも笑っていたよ」
10番パー4は第2打を木に当て、3メートルのボギーパットを残すピンチ。
それでも、片山の表情は曇らなかった。
12番パー4はティショットを左に曲げ、10メートルものパーパットが残った。
それでも、片山の笑顔はますます深くなった。
「あの2つが入っていなかったら最後は1打差か、並ばれるという展開で迎えていたと思う。あの2つは本当に大きかった。崩れそうになっても、ガツガツせず、笑っていられたからだと思う」最後まで、セルフコントロールを貫いた。
4打差で迎えた18番パー5。ティショットを打つ前に、ボブ・メイが言った。
「シンゴ、ここは左に打ってくれないかい? そしたら僕にもチャンスが出そうだよ」
そのジョークにひとしきり大笑いして迎えた最終グリーン。
OK距離のウィニングパットをタップインで決めると片山は、この日いちばんの笑顔でファンの歓声に応えた。