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マンシングウェアオープンKSBカップ 2000
終盤、度重なるピンチにも、片山は焦ることはなかった
16番パー4のティショットは右に飛び、ゆるやかな小山の中腹へ。ライは左足上がり、しかも前方は、大きな木の枝に遮られていた。
迷ったあげく、片山はここで9番アイアンを手にした。「グリーン手前に刻むだけでいい」と決めて打った第2打は、運良くグリーンを捉えたものの、3段グリーンのいちばん下段。カップまでは40ヤードも残っていた。
「パターで打ってもあの距離は寄せきれない。ここはもうボギーしかない、と思った。ただ問題は、このホールを“3パットのボギー”にするのがいいのか、“アプローチで寄せきれなかったボギー”で切りぬけたほうがいいのか、ということでした。
考えて、『僕にとってはパターで3パットをするほうが、気持ち的な打撃は大きい』と思いました。パターで寄せきれないボギーは、きっと後々、心に残ってしまう。
でも、アプローチで寄せきれずにボギーというのであれば、きっと気持ちを引きずることなく次のティグラウンドに立てるんじゃないか、と感じたんです」(片山)
16番のグリーン上でピッチングサンドを持った。
ちょっとクラブが浅めに入った第3打は、ピンまで3メートルくらいのカラーへ。これを2パットで沈めてこのホール、予想どおりのボギーとした。
通算17アンダーは、2位の佐藤と1打差。
そして最終18番パー5。片山に再びピンチが訪れる。
佐藤が、第2打を右池へ。これを見届けてから打った、残り268ヤードの片山の第2打は4番ウッドだった。2オンを狙ったのだ。
佐藤は、「僕が池に入れているのを見ているわけだから、ここでまさか晋呉が狙うとは思わなかった」と振り返る。
「刻んでも、ここはボギーが出そうな予感がしたんです。それなら、もう、思いきって近くまで寄せちゃえ!と考えたんですね。
でも、あの第2打は絶対にミスショットじゃない。思ったより風が左から抜けていて、読みきれなかっただけだから」(片山)。
片山の第2打は佐藤と同じルートを辿るように池にむかって飛んで行った。だが、佐藤の落下地点と違い、球はかろうじて、バンカー波打ち際のウォーターハザード部分で止まっていて、打てない状況ではなかった。
「先に佐藤さんがドロップエリアから打ちなおして、僕はどうしようか迷いました。僕の球は、池から打つのも可能だった。でも、もし(ウォーターショットが)失敗してバンカーにキャリーしたら、また池に入ってしまう可能性もあった。それなら、バンカーにドロップして打ったほうがいいと判断しました」(片山)。
バンカーからの第4打はピン右3メートル。勝負は決まった。OK距離の、ボギーパットがウィニングパットになった。
昨晩は眠れずに、「18番グリーンで、佐藤さんや、深堀さんがガッツポーズをしている場面を想像した」という片山。だが、確かにそこには、彼自身の、力強いガッツポーズ姿があった。