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ダイドードリンコ静岡オープン 2001

「“中(ちゅう)のほうがいいよ”、と言われ…」

トップタイの井戸木鴻樹

 井戸木が、半端な長さの“中尺パター”を使いはじめたのは、一昨年前。11月のブリヂストンオープンからだった。
 1メートル前後のパットを打つときに、理由もなく、ヘッドが揺れて、手が後ろに引けない。

 「そういう病気はない、と皆さんには言われるかもしれないけれど、…まあ、僕の中では、イップスっていう“病気”になってしもたわけですね」

 不振にあえいでいたとき、たまたまロッカーで見つけたのが試打用においてあった中尺パター。
 試しに打ってみると振り子の要領で、スムーズに手が動いた。「これや!!」中尺との出会いが、井戸木を救ったのだった。

 以来、2年と3ヶ月。その間、一度だけ、“浮気”したことがある。昨年のシーズンはじめの、ある大会でのことだった。
 しかし、以前の普通丈のピンタイプのパターでやってまわってみると、「なんと43パットもしました」と、結局、大慌てて中尺に戻して戦ったという。

 そして今週。あの苦い思い出にもかかわらず、開幕前に井戸木は再び、2度目の“浮気”を目論んでいた。
 「普通丈のパターで勝負しようか、とすごく迷っていたんです―」

 「もう2年以上も使ってきて、そのおかげで、イップスも直ってきたような気がしたし、それにヘッドが重くなっている中尺パターは、ゆっくりしたストロークは出来るけど、あっさりと打ちたい距離のときに、どうしても、もどかしさを感じてしまう。…そろそろ、短いのに戻してやってみたほうがいいんと違うかな、と思ったんですね」

 散々迷ったあげく、結局、井戸木が選んだのは慣れ親しんだ中尺パター。
 いつも一緒に練習している中村通のアドバイスが決め手だった。
 「お前のストロークに合うてるのは中尺パターや、と…。『お前のスロロークには、絶対、“中”のほうがいいよ』といわれ、決心がつきましてね。
 通さんの言葉はほんとうにありがたかった。なんというか…その言葉で、中尺での自分のパッティングに自信が持てるような気がしましたから…。今日もいいスコア出たしね。まだしばらくは、これで行きますよ」
 踏みとどまったことが、ひとまず吉と出ている。

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