Tournament article
サントリーオープン 2001
「争ったとき、負けない力に、僕は長けてる」
折り返しの10番、パー5(530ヤード)でクラークが、2オンに成功。198ヤードを6アイアンで3メートルに乗せて、イーグルチャンスだ。入れば、通算14アンダーで逆転される、という場面。
だが、片山はひるまなかった。
「こっちもバーディでくっついて行って揺さぶりをかければ、いくらイーグルを取っても、“やばい”って思うはず」
残り124ヤードの第3打には、気迫がこもった。ピッチングウェッジでのショットは、ピン手前1メートルにピタリ。バーディで、クラークの逆転を許さない。
片山の威嚇に気圧されるように、クラークは、次の11番でバンカーショットをミスしてダブルボギーとし、対する片山は、得意の9ウッドでピン手前4メートルにつけてバーディ。容赦なく、クラークを突き放す。
身長171センチの片山が、189センチのクラークをねじ伏せた。
「僕が9番ウッドを使うところで、クラークは、6アイアン・・・。でもそれはしょうがないよね。ひっくり返したって、9番が6番になるわけじゃないんだから(笑)。それより、相手が誰であろうが、争ったとき、負けない力に僕は長けてる。それを今日、見せつけることができたかな」
すべてが、計算どおりだった。
朝から、予感はあったのだ。
スタート前の練習では、アドレスで力がみなぎり、「かえって振り切れすぎちゃうくらい」。それで、「若干、球を逃がす」練習をしたほどだった。
「その練習がドンぴしゃ」この日、「パーオンを逃したのは3ホールだけ。曲がる気がしない」と、ショットが冴えまくった。
「パットだって、短いのは、一発も外していない」
激しい雨が降り出した14番。誰もがドライバーを敬遠するホールで、迷わず1Wを握り、ティショットは残り109ヤードのフェアウェーど真ん中。そこからピン手前2メートルを捕らえ、外さない。
次の15番、1メートル半のバーディパットを決めた。
「ボールがパターの芯を捕らえてるんだ。ラインも、すべて思ったとおりに打てていた」
プレッシャーも、好材料とした。
ビッグネームが名を連ねるV争い。キャディと、「この瞬間を、ゆっくりと楽しもうよ」と話した。
「こんなこと言える選手、そんなにいないんじゃない? こんなふうに冷静だからこそ、自分の力が発揮できる。しっかりアドレスして、振りきれる」
あとはただ、Vロードをひたすら突き進むだけだった。
「他に、僕以上のプレーをする人がいない限り、勝てると思っていた。だってこれだけ、ショット、パットが良ければ、誰もついて来れないんじゃない?」
3打差の完全優勝。圧倒的強さと自信で、片山が、ツアー10勝目を引き寄せた。