Tournament article
ゴルフ日本シリーズJTカップ 2002
「今はプレーが終わって、トレーニングしよう、との余裕がある」
3番の3パットボギーで暗雲垂れこめたフロント9。8番でも、バンカーから打ったアプローチが寄らず、4メートルを外してボギー。
一進一退の展開に、ハーフターンで片山は、この日はサンタクロースのオーナメントをつけていた真っ白なテンガロンハットを、おしげもなく、脱ぎ去った。
そして、再び被りなおしたのは真っ黒のハット。
「流れを変えたかった。正反対の色で、気分を変えたかったんです」
作戦成功。
イラついていた気持ちが、不思議なほど落ち着いて、ゴルフも前向きに。後半4バーディを奪って、再び、単独の首位に浮上して「最初から言ってたように、今週は勝つよ!」
強気な片山に戻って、ホールアウトだ。
ここ、会場の東京よみうりCCを前にすると、自然と、血が騒ぐ。
過去、幾度か繰り返してきた悔しさが、よみがえってくるからだ。
98年大会、2打差4位からスタートした最終日。
1打差まで追い上げながら、あと一歩のところで、宮本、ジャンボとのプレーオフに進めなかった。
翌年の99年は、最終日に9バーディを奪い、一時は首位の細川に並びながら、あがりホール2つのボギーで後退。
完全に勝てる、と確信した展開でまたしても敗れ、その翌年の2000年には、リベンジに成功したとはいうものの、
「“俺はあのとき、なんであんなことをしちゃったんだろう”と…。あの悔しさは、これから先、何度も何度も勝たないと、晴れるものでは、ないんですよ」
収まることのない執念が、片山を突き動かしている。
あれから2年がたち、体を鍛え、技を磨き、体力、ゴルフ面、そして精神面でも「自分は、成長できている」との思いが、心の支えだ。
「これまでならば、今ごろはすっかり疲れきっていて、とりあえず早く寝よう、とかそういうふうになっちゃうけど、今は“トレーニングしよう”とか、まだまだ余裕があって。今年は風邪も1回しかひいてないし、確実に、僕の中の“エンジン”は、大きくなってきています。
…もっとも、タイガーよりは、まだまだ、うんと小さいけれどね!」
究極の目標は、愛車でもある「フェラーリ級」と笑う片山が、“最終コーナー”はエンジン全開。宣言どおり、トップで駆け抜けるつもりだ。