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三井住友VISA太平洋マスターズ 2003
48歳、室田淳のバロメーター
48歳、室田淳のバロメーター
これほど大量リードでの優勝も、「実は今週、自分にまったく期待していなかった」と室田は言う。
大会直前の火曜日のことだ。朝、歯を磨いているとき、ふいに腰に違和感を覚えた。「持病の腰痛。ぎっくり腰寸前のような感触」。すぐにツアーに帯同するフィットネスカーに飛び込んで、幸いそれほど大事に至らなかったが、本戦に入っても恐る恐るのプレーには違いなかった。
48歳。初優勝をあげた30代のころより、体力、集中力が落ちてくるのは当然だ。室田はそれらに抗うことなく、しかし諦めて悲観することもなく、じっくりと真正面から向き合ってきた。
プレーが終われば毎日、フィットネスカーで黙々と汗を流す姿があった。オフは、毎日適量のランニングを欠かさなかった。故障を抱えながらでも、なんとか1年を乗り切れる体力作りに、日夜励んだのだ。
38歳のとき、踏み切ったスウィング改造もそうだった。米ツアー参戦の合間に観戦した94年のマスターズ。世界のトッププレーヤーたちのショットに衝撃を受けて決意した、フェードからドローボールへのチェンジ。それは長く苦しい道のりだった。何度も失敗を繰り返し、しかし歯を食いしばって耐え、40歳の自分に合った無理のないニュースウィングを完成させたのだ。
今年これまでの平均は274.47ヤード。今週のドライビングディスタンスはランク38 位。48歳を迎えても、さほど若い選手たちに置いていかれていない、と感じられるその飛距離が何よりの「バロメーター」と室田。「他のどの選手でもそうだと思うけど、飛距離さえそこそこ出ていれば、まだ戦えると思えるものなんですよ・・・」。