難しいホールが続く上がり3ホールで連続バーディ。その結果も当然、とばかりに伊沢が言い放つ。
「今までのゴルフの内容で、こういうのが出ないほうが、おかしかったんですよ」。
437ヤードの18番パー４が真骨頂だった。
6アイアンで打った残り173ヤードの第2打は、軽くバウンドしたあと左奥50センチにピタリ、と止まった。途端に沸き起こる大歓声。鳴り止まない拍手。
ニッコリ笑って帽子のひさしをつまみ、いつものポーズで声援に応えてみせた伊沢。
「いやあ、今日はほんとうにやってて楽しかった！」
本人も「記憶がない」という10バーディ（2ボギー）は、今季の最多バーディ数。63は、初代チャンピ オンに輝いた2000年の今大会初日にマークして以来、2度目の自身ベストスコアタイ。通算9アンダ ーは首位タイ浮上。
ここ数週間、取り組んできたことの成果が、ようやく出た。
2週前、コーチの江連忠と話し合い、「バックスピンがかかりすぎると、距離の計算がしにくい」との 理由で、クラブを今までより、2インチ短く握るようにした。その分、いつもより大きめのクラブを使 って、軽めに打つ。すると、スピン量が抑えられ手前からバウンドする球が打てる。
今大会の会場、宍戸ヒルズCCのグリーンは、しっとりとソフトなわりに、スピードが出る。特にスピンがかかりやすいコンディションを前に、江連コーチはくぎを刺し た。
「伊沢さん、今週は特にバックスピンはやめてください。ボールマークより実際の球が後ろにある状 況は、絶対に避けましょう」。
この言葉を肝に銘じ、ついいつものクセで長めに握りがちになるグリップに気をつけながら、大量バーディを積み上げていったのだった。
先週のミズノオープンでは、3日目に単独首位に立ちながら、最終日に伸ばしきれずに惜しくも2位。 だが、そんな結果にも「反省？？　いえ、特にはしていませんけども・・・」まったく意に介してい なかった。
「大きなスコアが出る可能性は、前からずっとあったし、その体制も整っていた。ただ先週は、ちょ っと風が強かっただけでね。いつ、こういうスコアが出るのかなあ・・・と待っていた くらいだったので 、今日はちょっと安心しましたよ」（ニッコリ）。この日2日目の結果は、出るべくして出たものだった。
今年始めにコーチ契約を交わしたとき、江連がこんな約束をしてくれた。
「賞金王になったとき（2001年）より、間違いなく良いゴルフになります。頑張りましょう」。
その言葉を裏付けるかのような伊沢の自信満々のこのコメント「今日のゴルフは、あ のころよりも 良い内容だと言えると思う」。
さらに進化をとげたゴルフで、自身2度目となるツアープレーヤーNO.1の称号を奪い取る。

• 伊澤 利光