Tournament article
JCBクラシック仙台 2005
S・K・ホ強さの秘訣は、「初心を忘れないことです」
粘り強さと、絶対に崩れないそのステディなプレーぶりで、「SKが上にいたら、勝てる気がしない」と、ほかの選手たちに言わしめるまでになった。
優勝インタビューで自身の強さの秘訣を聞かれたとき、右こぶしを作って鼻の上に置いてからSKは言った。
「こう、ならないことです」。
もちろん、日本でよく使われるそのゼスチャーの意味を、十分に理解して言っている。
“天狗”にならないこと。
どんなに勝ち星を重ねても、いつでも謙虚に練習を積むこと。
2001年のチャレンジトーナメント賞金ランク1位の資格で、日本ツアーに本格参戦。そのとき、恵まれた試合会場の雰囲気に感動した。
母国のゴルフ場では通常営業を優先して、自由に練習させてもらえないことが多かったという。
それだけに日本に来て、芝の上から思い存分に球が打てることが、ただただ嬉しかった。
そのとき感じた喜びを「いまも忘れていない」とSKは言う。
「最初の気持ちをいつでも忘れないでいること。忘れないで、常に練習を積むこと。それが大事なんだと、僕は思います」。
いまではすっかり流暢な日本語も、もちろん当時はほとんど話せなかった。慣れない環境に四苦八苦しながら、それでもひとり異国の地でたくましく、自分の居場所を確立していった。
外国から来た選手たちは、たいがい、同じ国の選手たちと行動をともにする。日本語も、何年たってもほとんど話せない選手が多い。
しかしSKは、積極的に日本人選手たちの輪の中に入っていった。「みんなと友達になったほうが、戦いやすい」そう判断したからだ。
練習ラウンドも、いつも日本のシード選手たちと一緒だった。
そうしながら言葉を覚え、トッププレーヤーの技を盗んでいった。
「どんなに上手な選手でもミスをする。だけど僕との違いは、そのあとのリカバリー。大事なのは、プレッシャーの中でそれをどう克服するか」。
そう気がついて、ショートゲームの練習に特に精を出すようになったのもこのころ。
そんな努力の積み重ねが、このツアー通算5勝目につながった。
表彰式、インタビュー、記念撮影と、チャンピオンの恒例行事をひとおりこなしたSKの背後から、足音をしのばせ近づいてきたのは、星野英正や宮里兄弟ら日本の友人知人たち。
「エスケー!! おめでとう〜っ!!」
歓声と同時にいっせいに、その背中にビールのシャワーを浴びせられた。手荒い祝福。笑顔と握手とハイタッチ。
柔らかな物腰と折り目正しさ、親しみやすさもデビュー当時そのままに。この5年間でSKは、優勝を心から喜びあえる、かけがえのない大親友も手に入れた。