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アイフルカップゴルフトーナメント 2005

髙橋竜彦が、ツアー初優勝!!

放心状態で、田島創志の体を受け止めた。日大の後輩で、練習仲間で、良きライバル。お互いに最終日最終組でスタートしたこの日は、「俺か創志、必ずどちらかが優勝しよう」という暗黙の了解があった。
その目標を自分が実現したことが、すぐには信じられない。

ウィニングパットを沈めた瞬間、田島が涙を浮かべて抱きついてきた。それで、ようやく実感できた。
「創志の涙で、自分もついウルっときた」。
涙でボンヤリとにじむ視線のそばには、いつの間にか最愛の人の姿もあった。

3月3日に結婚したばかりの妻・葉月さん。

2人で抱き合って喜びを分かち合い、肩を並べてグリーンを降りた。
と、ギャラリースタンドからやんやの歓声。
「ボール、投げて〜!!」
「髙橋さん、ボールくださ〜い!!」
駆けつけたファンが、ウィニングボールのリクエスト。

その声に微笑みながら、「投げてあげたら?」というように、葉月さんがスタンドに向って手を差し伸べた。
葉月さん自身もプロゴルファー。
ファンに応えることの大切さを、知っている。

だが髙橋は、躊躇する素振りを見せた。
その様子を見た葉月さんは、戸惑いの表情を見せた。
髙橋が、葉月さんに何かささやいた。
しばらく見詰め合ったあと、髙橋はその手にボールを握らせた。
葉月さんは、それを両手で包むように受け止めてから、スタンドに向って済まなそうに手を合わせた。

「すみません、さすがに投げれられなかった」(高橋)。

その週の28日木曜日は、葉月さんの32回目の誕生日だった。
2位と2打差の首位でスタートした最終日、「今日は勝つから」と約束して夫は出ていった。
ウィニングボールは、その約束を叶えた何よりの証しだ。
迷った末に、やはり妻に捧げることに決めた。

「僕は、ゴルフ・バカ」と本人も言うように、寝ても覚めてもゴルフ漬けの夫の気持ちは、同じプロゴルファーだからこそ、よく分かってくれる。
「家では、僕ができるだけ気持ちが休まるよう気遣ってくれる。自分のこと以上に、僕に夢中になってくれる人」。
内助の功は、今年7試合に出場して予選落ちなしという成績が、何より物語っている。
いよいよ掴んだツアー初優勝は出場権さえなかったころも、芯から支えになってくれた妻へ最高のバースデープレゼントになった。

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