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ANAオープンゴルフトーナメント 2006
近藤智弘が逃げ切ってツアー通算2勝目
むしろ、そんな選手が大半を占める。
「だからこそ2勝目は狙っていたし、それが出来たのは凄いことだと思う」。
しかも、プロ7年目にしてつかんだツアー初優勝は5月の日本プロ。
星野英正、矢野東。
何かと比べられてきた同期2人の一番最後に、ようやく手にした1勝目からわずか4ヶ月。
誰よりも、早くさらった2つ目の勝ち星。
欲しくて欲しくてたまらなかったタイトル。
あんなに焦がれていた優勝だったのに、いざ勝ってみると、意外と感動が薄いことに近藤は気付く。
「実は、日本プロのときもそうだった」と振り返る。
「アマチュアのときもたくさん勝ってきたけれど、プロのは別格。価値が違う。それが出来たら、どんなに嬉しいだろうって。この7年間ずっと想像してきたはずだったのに。いざ勝つと『ああ、勝っちゃったんだな』って。その瞬間にはもう冷めている自分がいた。もちろん嬉しいのは嬉しいんだけど・・・なんでだろう?」。
構えてすぐ打つ、思い切りの良さ。
「前ホールのミスも、歩き出した瞬間に忘れてる」。
良い意味で、過去を引きずらない。切り替えの早さが持ち味だ。
この週、ショットが絶好調。大会が始まる前から決めていた。
「勝ちたい、ではなく、勝たなくちゃいけない、でもなく。この大好きなコースで絶対に勝とう、と」。
この日9番パー5でチップイン。残り20ヤードの第3打を直接入れた。
このイーグルで再び首位に躍り出て、ますます思いは強まった。
「・・・今週は、絶対に僕にチャンスがある。もう、行くしかない」。
16番で短いパーパットを外して、2位と1打差。
土壇場のピンチにも、最初の思いは変わらなかった。
「今日は、僕が勝つ」。
最後まで、強い気持ちを保ったまま迎えた最終18番。
激しいプレッシャーにもかかわらず、頭の中は冷静だった。
「たとえ距離が残っても、真ん中から打ちたい」。
ユーティリティの1番で打ったティショットはフェアウェーを捉えた。
7番アイアンでピン左手前3メートルにピタリとつけて、パーパットのウィニングボールを拾い上げたその瞬間だ。
1打差で逃げ切った「価値ある」この勝利も、もはや近藤にとっては過去のものとなっていた。
優勝インタビューで、開口一番。
「こうなったら欲が出てきた。今年、もう1勝したくなった」と、チャンピオンは言った。
2勝目の壁をあっさりと突き破るなり余韻に浸る間もなく、早くも次の目標を見据えていた。