Tournament article
コカ・コーラ東海クラシック 2006
河井博大(かわいひろお)が単独首位
「見たい、と思って待っていても、すぐに自分の番が来てしまって。自分の順位を確認する間もなくその場を離れてしまう」。
だからホールアウトしてから、自分がただ一人アンダーパーをマークしていて、しかも2位と2打差の単独首位であることを知って驚いた。
「僕は、そんな位置にいられる選手ではないのに・・・。昨日もそうだったけど、今日もたまたま。
2日連続の大事故です」と連ねた言葉は、あながち謙遜ばかりでもない。
本気でそう思っている。
「僕は、本当はこんなところにいられる選手ではない。僕が一番上にいるなんて、想像できない。ありえない」と真顔で言った。
自他共に認める「マイナス志向」なのだ。
初の最終日、最終組にも素直に喜べない。
「僕は、メンタルも弱いし、パットも下手だし、技術もない。僕のような選手が、そんなところでプレーしたらダメなんだじゃないか・・・」と、思ってしまう。
そんな自分と対極にいるのが、賞金王・片山晋呉だ。
「彼には、僕にはないものがある」。
先週の最終日に同じ組でまわったが、常に自信に満ち溢れていたと思う。
「自信とは“自分を信じること”だけど。・・・僕には、それがない」。
たとえば、バーディチャンスを前にしても、「入れてやる」という気持ちが持てない。
「それよりも、早く打たないとスロープレーで警告を受けるんじゃないかとか・・・。打つときも、『お願い、入って!』という気持ちで打つ」と、どこまでも自虐的だ。
しかし、この難コースではかえってその性格が、奏効するのではないか。
「マイナス志向でやるからこそ、持っているものが発揮できるパターンもあるのではないか・・・」。
ひそかに、そんな期待もある。
落としどころが限られたフェアウェー、深いラフ。
この日、67をマークして2位タイに急浮上した手嶋多一も言っていた。
「今年の三好は、優勝を意識しながらまともにやれるコースではない」。
自信満々で挑む者ほど、大きなケガをするだろう。
「明日も優勝は意識しない。余計なことは考えない。『お願い!フェアウェーに行って!』というような・・・この3日間と同じテンションでプレーしたい」。
地元・愛知県の春日井市在住だが「地味な性格だし、知り合いはあまり多くないから」と笑う河井。
いまもっとも「イメージできないこと」というツアー初優勝は、今年プロ10年目にして現実のものとなるか。