Tournament article
三井住友VISA太平洋マスターズ 2006
桑原克典「同級生って、本当に良いね!」
そんなふうにして、はじめは無邪気に戯れていた2人。
しかし話題が核心に及ぶと次第に小声に、そして表情は険しくなっていった。
昨年に引き続き桑原は、今年シード落ちの危機にいる。
現在賞金ランク92位は、来季の出場権が与えられる上位70人にはまだ遠く及ばない。
今年37歳。「膿が出る時期」と、桑原は言った。
練習場では良い球が打てる。しかし、ひとたびコースに出れば、積み重ねてきた経験がスイング時に過剰反応を起こす。
特に失敗したときの経験。
「断ち切ろうするほどに、体が反応してしまう」。
そして、悪いほうに想像したとおりの球が出る。
「ゴルフが下手になったわけじゃない。すべては気持ちの問題。川岸さんや室田さん・・・みんな、同じような経験を克服して今がある。このまま消えるか、もう一度上がれるか。今が踏ん張りどきなんだ・・・」。
丸山は、そんな桑原の気持ちを心から理解してくれた。
自分もアメリカで、そういう経験で悩んできた、と。そして、それをどうやって乗り越えてきたか。
とうとうと、語ってくれたのだ。
御殿場の練習場で、2人の立ち話は2時間にも及んだ。
桑原も、最後は「聞いてもらえてよかった」と、笑顔になった。
「同級生だからこそ、分かり合えることがある。同級生って、本当にいいね!」と吹っ切れた表情で迎えた初日は、3アンダー8位タイ。
忙しい時間を割いて、親身になって相談に乗ってくれた親友の心遣いは、絶対にムダにしたくない。