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UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2006
髙橋竜彦、夫婦でつかんだツアー2勝目
周囲は「シード権があるのだから。ゆっくりやればいい」と、言うかもしれない。
「でも、そうじゃない」と、髙橋は思う。
「僕らプロゴルファーは、シードが取れたからって生活が保障されるわけじゃない」。
それに、周囲の自分を見る目も変わる。
「常に、上を目指してやっていかなくちゃいけない」。
現状に、満足しているわけにはいかない。
生来が生真面目な32歳は、そうやって自分を追い込みすぎていたかもしれない。
開幕から2試合連続の予選落ちに「早くなんとかしなければ、という焦りが出た」。
結果ばかりを求めるあまりに、見えなくなっていた。
「自分がいまやるべきこと」。
これまで3年間、コーチの堀尾研仁さんと、取り組んできたことだ。
「僕は、クラブが下から入ってフックが強くなってミスをする」。
それを防ぐために、2人で決めた“ドリル”があった。
「上からクラブを入れて、左に抜いてフェードを打って安定させる」。
もういちど初心に帰ってやり直し、ちょうど調子を取り戻しつつあるときだった。
その矢先に手にしたツアー通算2勝目は、ツアープレーヤー№1の座。
かたわらには、いつも前向きに支えてくれた最愛の人。
女子プロでもある妻・葉月さんは、ゴルフが良く分かっているからこそ、夫にうるさく言わない。
ただ、いつも笑って「大丈夫だから、次がんばろう」とだけしか。
それは何より、「主人の力を信じている」という気持ちの表れ。
さりげない妻の一言に、どれだけ力づけられたことだろう。
初日から、「勝ちたい」と意気込む夫に、毎日18ホールついてきた。
それでも前日3日目だけは、葉月さんにどうしても外せない仕事があった。
会場内で行われていた第4回スナッグゴルフ対抗戦JGTOカップ全国大会。
そのテレビリポーターとして、子供たちの戦いぶりを伝えたり、インタビューしたりする役目があった。
「本当は、気が気じゃなかったんですけど…(笑)」(葉月さん)。
ムービングデーこそ、プレーについて歩きたかったが「お互いに、自分のやるべきことを頑張ろう」と誓い合い、その日夫は首位に立った。
ウィニングボールは、「最後まで暖かい声援を送ってくださった」大ギャラリーにプレゼント。
満員の観客席に投げ込んだ。
もっともそれは、18番で「3パットしたボールだったけど(笑)」。
そのかわり葉月さんには、とっておきを残しておいた。
14番で、長いバーディパットを決めたときのもの。
2位以下を突き放し勝利を手繰り寄せるきっかけとなったゲンの良いボールこそ、大切な人の手にそっと渡した。