Tournament article
フジサンケイクラシック 2006
井戸木鴻樹「あの2ミリ分、ゴルフで頑張ります」
「ここは僕でも、ティショットでプレッシャーがかかるコースやけれど。なにがなんでもフェアウェーに置いて、しぶとく2パットで行く。それが僕のゴルフ」。
45歳を迎える今は、若手に100ヤード近く置いていかれることもある。
昨年から4番アイアンの変わりに9番ウッドを入れるなどして、足りない部分をカバーする。
2002年から、2年連続のフェアウェーキープ率1位の妙技を発揮して、優勝争いに加わった。
昨年、パットの不振でシード落ち。
アドレスで、初めから左を向いていたことに長く気付かずに来た。
「プレッシャーがあるときもないときも、1メートルが入らない。悩んで、精神的に病的になったほどだった」と振り返る。
打ち出す方向に向けてラインが入っているパターを使ってみて原因が判明し、ようやく復調の兆しだが、現在賞金ランク83位。
今年も、いまだメドが立たずもし再びシード権を逃せば、次はQTのサードステージから挑戦するしかない。
先月、エントリー用紙を取り寄せて、すでに申し込みは済ませてある。
「あんな“お通夜”みたいなところ、ほんとは行きたくないけれど・・・」と、QT会場の雰囲気について、独特の表現をして笑ってから、「シードを取り返そうとか考えると苦しくなるから。コツコツ行って、地道に稼いで、それでダメやったらまたQTに行こう、と。そう考えることで、気持ちを切り替えている」。
それが今週の好スコアにつながっているのかも、と結んだ。
家族に「蟻が家に上がってくるからやめて」と言われ、いまは一匹も飼っていないが趣味はオオクワガタのブリーダー。
手塩にかけた幼虫が、成長していくさまを見るのが楽しみだった。
井戸木によると、ブームの頃には8センチクラスのものに1000万円の値がついたことがあったそうだ。
だが、井戸木が手に入れたのは7.8センチ止まり。
その大きさだと、「2万円くらいの価値にしかならなかった」。
たった2ミリでそれだけ価格差を生むのは、どこかプロゴルフに似ているようだ。
ついに“大物”が得られないまま趣味を諦めるしかなかった当時の悔しさを振り返った井戸木は「あの2ミリ分、ゴルフで頑張りましょか」と、笑った。