Tournament article
フジサンケイクラシック 2006
片山晋呉「明日は来て良かった、と思われるような18ホールを・・・」
16番パー3は10メートルの下りフックをねじ込んで、今週初めて見せた力強いガッツポーズ。
5年ぶりに引っ張り出したという、エースパターにキス。
「・・・でも、あれだけでしたね」。
独走態勢で最終日を迎えようというのに、歯切れが悪い。
どうやら、片山が深い悩みの中にいるようだ。
練習日から「僕らしくない暗さ」。
ヒザと背中を痛めて全米プロゴルフ選手権を欠場した頃に「聞かなくても良いこととかを聞いてしまって・・・」。
それをきっかけに、常に上で戦うことの厳しさ、難しさを思い知ったという。
昨年、2年連続の賞金王。
「それまでは、目指すものを追いかけているだけでよかった。追われる立場になって、トップとしてしなくちゃいけないこととか、もっと大人にならなくちゃ、とか・・・。考えているうちにどんどん暗くなっていった」という。
なんとか解決したいと、もともと好きな本をいっそう読みあさったり、サラリーマンや企業家向けのセミナーに参加したりもしたが、いまだトンネルは抜けていない。
「もっともっと、いろんなトップの人に話を聞いてみたいと思う」。
いま、いちばん興味があるのは小泉首相だ。
「あれだけいろいろ言われても、あれだけ発言できる。あの強さはどこから来るのか知りたい」と、真顔で言った。
そんな精神状態での単独首位に、「自分でもトップに立っている感覚がない。悪いながらも、上手くやっているな、という感じ」と、言葉にもいつもの迫力がなかった。
幸い、パッティングが「今年1番の出来」。6年前、初めて賞金王を取ったときのパターに、グリップも懐かしい形に戻したことが、「良いきっかけになっている」。
今季2勝目のチャンスを迎えてもなお、テンションが上がる気配がないそうだが、それでも大観衆を前にして、自然と沸いてくるのはこの気持ち。
「来て良かったと、思ってもらえるような18ホールにしたい」。
最終日はギャラリーの声援だけが支えだ。