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ダンロップフェニックストーナメント 2007
丸山茂樹「無欲でやる」
2日目はアイシングだけでスタートしたが、いざコースに出ると18ホール歩ききるのもやっとの状態。
「今日は棄権しようか・・・」。
迷いに迷ってけっきょく重い腰を上げたのは、自分のプレーを楽しみに週末のコースに足を運んでくれるであろうギャラリーのため。
期待を裏切らないプレーぶりだった。
14番で、右足だけバンカーに足を突っ込む不自然な姿勢から寄せきれず、3メートルのパーパット。
痛む足をこらえ、低い姿勢でしゃがみこみ、「今日、いちばん真剣に読んだ」というラインはスライスフック。
これを沈めてボギーなしで迎えた最終18番は、あえて第2打を刻んだ。
得意なサンドウェッジでのフルスイングを残した第3打はピンまで87ヤード。
1.5メートルにつけて、バーディフィニッシュ。最終日を前に、通算5アンダー5位タイ浮上は「体はボロボロ。ショットもよくないけれど、なんせIQが高いんでね」と、頭を指しておどけてみせた。
今年、8年目を迎えた米ツアーはもっとも厳しいシーズンだった。
体の故障もあって、数年前から限界を感じていた。
「アメリカで戦うにはまず大陸を渡り切る体力と、300ヤードを超えるドライバーショットが条件」。
それが、最近では常に3、40ヤードは置いていかれて、パワーゲームついていけない。
本格参戦を始めたころこそ「小さくても飛ぶ選手」ということで、歓声も上がったものだが「いまは、おーっと言われることもなくなった」。
客観的に自分自身を見てみても「いったい、こいつに何があるのかと思ってしまう。俺が、ここでアドバンテージを取れるものは何ひとつないんだ、と。特にメンタルがしょげていた。ずっと、奥歯をかみ締めながらやっていた」と、振り返る。
特につらかったのは5月、6月。
中盤を過ぎてもシード権の確保はメドがつかないまま「もう諦めようか・・・」と、何度も考えたという。
ドン底の中、「残りのゴルフ人生、自分が持ってる味でやるしかない」と気持ちを切り替えた。
懸命に気力を振り絞り、ようやくマルちゃんスマイルが戻ったのは、シーズンもクライマックスを迎えた先月末だった。
フォールシリーズも残り2戦となった「ギン・シュールメールクラシック」は月曜日までゲームが持ち越されるというこれまた過酷な条件の中、優勝争いの末に2位に入った。
賞金ランクは前週の137位からシード権が与えられる103位にジャンプアップ。
土壇場でしぶとく粘り、みごとシード権を確保して先週の10日(土)に帰国したものの、「もう一杯一杯できている」。
時差ボケも、まだ抜けない。1月の開幕から戦い続けて、「頭も体も、使い果たして集中力も残っていない。38歳、もうギリギリだな」と、苦笑した。
満身創痍で迎える最終日も「無欲でやる」。
それしか、もう本当に言い様がない。