Tournament article
日本オープンゴルフ選手権 2008
藤田寛之「選手が苦しむ姿に感動があるのがメジャー」
8月のバナH杯KBCオーガスタも毎年、気合いが入るトーナメントだが「今回はそれ以上に地元、という意識がある」。
小学生のころは夏休みのたびに、新宮からフェリーで島に渡り、夜更けから祖父の船に乗せてもらって一緒に漁に出た。
香椎高校時代に通った通学路を横目にしながらの会場入りは、3番ティにさしかかるたびに心の中でつぶやく。
「じいちゃん、ばあちゃん、オレ頑張るから!」。
しかしそんな藤田の気合いをあざ笑うように、「コースはメジャーの雰囲気をびしびしと漂わせている」。
古賀は実家にこれほど近くても、そうそう気安くは回れない。
92年のプロ転向直後に後援会のコンペで一度、回ったきり。
しかしそのあと改修されたコースはほとんど初めての挑戦といってもいい。
古い松林に囲まれたフェアウェイは狭く、深いラフの先に待ち受けるグリーンは小さくて速い。さらに極めつけは、平らな部分がないとまで言われる複雑なアンジュレーション・・・。
主催の財団法人日本ゴルフ協会がプライドをかけて施すセッティングは「これでもか、これでもか、という難しさ。でも、それがメジャーの良さなんだと僕は思う。選手が苦しむ姿に感動があるのがメジャーなんだ、と」。
忍耐と勇気が試される大舞台は「まずは確実にフェアウェイに置いて、グリーンに乗せることが基本」だが、それすら上手くさせてくれそうにない。
「攻めてばかりでも、守ってばかりでもダメで・・・。一歩一歩確実に、冷静に、ときには果敢に」といったことを、表現を変えて何度も繰り返す様は、何より自分に言い聞かせているようでもあった。
数年前から毎年、照準を合わせているこの日本一決定戦は今年、地元開催ということでよりいっそう気合いが入るが実家には泊らず、あえて博多市内に宿を取った。
父は根っからの九州男児で「一度座った場所からは絶対に動かない」。
「お茶、新聞・・・何をするにも一声で済ます」。
まして一人息子の久しぶりの帰郷には、きっとまた小言が始まるだろう。
「子供はいくつになっても子供ですし、実家から通うとこっちのペースが崩れそうで」と苦笑する。
初優勝のときでさえ褒めなかった父だが、勝てば5年シードのこの大舞台で頂点に立てば「多分、さすがに・・・ね」。
子供は、いくつになっても親に褒めらると嬉しいもの。
それが今週のモチベーションのひとつでもある。