Tournament article
コカ・コーラ東海クラシック 2008
武藤俊憲がツアー2勝目
22歳のルーキー池田勇太が、振り払っても振り払ってもしぶとく食らいついてくる。
「途中で思わずしつこいよと、言いたくなったくらい」。
16番パー3で、トイレから出てきた武藤は目が点だ。
池田がピンそば2メートルにつけていた。
バーディで再び並ばれて、迎えた17番で今度は冷や汗。
第3打が、あわやチップイン。
しかしピンに命中したボールはわずかにカップを外れ、キャディの串田雅実さんが耳打ちした。
「今日が勇太くんの日なら、あのアプローチは入ってます。外れたのだから、今日は武藤さんに流れがある」。
この一言でたちまち気持ちが楽になった。
そして、いよいよ最後の最後に振り切った。
最終18番で、池田は第2打をグリーン右サイドの池へ。
対する武藤は、ピン左3メートルのバーディパットをねじ込んだ。
2005年のツアー初優勝は、7打差からの大逆転だった。
「偶然と言われても仕方ない勝ち方だった」。
あのときは最終組の6つ前で早々とプレーを終えて、感激のウィニングパットももちろんなかった。
「やっぱり18番でカップインして、ガッツポーズしてこそ1勝の価値がある」。
まして、序盤から好調を持続してきた今季、何度も繰り広げてきた優勝争いの中でも「今日は一番良いゴルフが出来たから。今回の優勝はまた格別です!」と、今度こそ納得のツアー2勝目。
今年8月7日に生まれたばかりの次女・亜耶(あや)ちゃんはさすがにこの春、移動の便を考慮して借りた大阪市内のマンションでお留守番だが、駆けつけた妻・妙子さんと長女・彩夏(さやか)ちゃん。
家族揃って記念撮影に収まって「ほんとうに幸せです!」。
今年30歳を迎えた二児の父は感無量だ。
しかし、物語はこれで終わりではない。
今年、武藤が年頭に立てた目標はもっと上にある。
口に出してしまうと効果が薄れてしまうという理由で、その内容はまだ誰にも打ち明けていないそうだが少なくとも、このツアー2勝目は単なる通過点でしかなさそうだ。
いま、米ツアーから一時帰国中の丸山茂樹も「あの子は必ず大化けする」と予言した逸材は「目標は、常に高いところに置かないと動かないから。残り9試合で必ず達成してみせます」。
シーズンが終るころに改めて、武藤に今年の目標の中身を問うてみたい。