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マンシングウェアオープンKSBカップ 2008
中島雅生「遠慮は、何もいらない」
「近藤さんはフォローでも、アゲンストでもスピン量の誤差が少ない。やっぱり、俺とは違う。俺はまだまだ」。
そんな思いが2、3日、頭から離れなかったという。
その直後の今大会は、今季からウェア契約を結んだデサント主催。
「ますます気が引き締まった」。
開幕3戦目にツアー通4勝目をあげたばかりの近藤との差を少しでも縮めるために、クラブのシャフトを変えるなど試行錯誤の中で、ホストプロが好スタートを切った。
前半の2番から4連続バーディを奪うなど、66は6アンダーの3位タイに「今週は少しでも上に行きたい」と、力をこめた。
いわずとしれた中嶋家の長男は、引き継いだ“DNA”に将来を大いに期待されつつ、2002年にプロ転向。
しかし、偉大な父の存在が足かせになった。
「生意気に見られないように。行儀良く、好かれるプロに」。
そんな思いから、ゴルフが窮屈になっていた。
一昨年は、出場優先順位を決めるクォリファイングトーメント(QT)のサードステージで失敗。出場権さえ失った。
そのショックは大きく、「ゴルフをやめて、別の職に就こう」と、真剣に考えたこともある。
諦めかけた中島を踏みとどまらせたのは、ほかでもない父だった。
なかば強引に連れていかれたホームコースの栃木県・東松苑ゴルフ倶楽部でアプローチの徹底練習と、ハードなトレーニングを励行。
ゴルフ界で一時代を築き上げた父親からの“愛のムチ”。
特に優しい言葉をかけてくれるわけでもなかったが、大きな背中が何よりのお手本だ。
「父ちゃんのおかげで、もう一度、ゴルフに賭けてみようという気になれた」という。
さらに、新しい家族の存在が背中を押した。
昨年1月に長女・ひかりちゃんが生まれたことで、吹っ切れた。
「嫁と、娘と。いつだって絶対に味方でいてくれる2人がいれば、たとえ周りが全員、敵でも戦える」。
自分が父親になることで、二世プロの呪縛から、逃れることが出来た。
「ここが俺の戦う場所。遠慮は何もいらないと、心底思えるようになった」という。
先週からタッグを組むプロキャディの吉岡雅子さんと、「まちゃまちゃコンビで、頑張ります!」と、吹っ切れた笑顔で、ツアー初優勝を目指す。