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マンシングウェアオープンKSBカップ 2008

谷原秀人が大量リード

大差をつけて最終日を迎えることに、プレッシャーを感じる選手は多い。一晩の間に、さまざまな思いがよぎるからだ。あの片山晋呉ですら、3日目に7打差つけて勝った先週の日本プロで「昨日の夜は、負ける夢を何度も見た」と、打ち明けたほどだ。

谷原も例外ではない。「ティグランドに立つまでは、僕だっていろいろ考えますよ」と言うが、ひとたびコースに出れば、すべて吹き飛ぶ。
「僕の場合、クラブを握れば不思議と気持ちが落ち着くんです。あとはこれを振ればいいんだ、って…そう思えるから。クラブを握ったら相手のスコアも、不安とかも全部消えちゃうタイプだから」。

むしろV争いよりも「そのあとの優勝スピーチのほうが緊張するかも」という谷原は、自らを称して「野生児ですから」と、笑った。
2006年の全英オープンで5位の大活躍も、そんな強心臓ぶりがもたらした。

プレッシャーとは無縁の男は相も変わらずその先に、世界の舞台を見据えている。
中日クラウンズから3番アイアンのかわりに、3本のウェッジをバッグに入れたのも、そのいっかんだ。
53度と56度、そして60度のウェッジを状況に応じて打ち分ける。「海外では、そういうことが必要になってくるから」。この日15番パー5で、右奥からチップインイーグルを奪ったのは、60度のロブショットだった。
56度のウェッジは「バンカーからでも使える。60度では、下をくぐってしまいそうな深い芝からでも、フェースにくっついて柔らかいボールが打てる」と、どの3本も重宝しているという。

フェードヒッターは、初出場を果たした昨年のマスターズでその直前に、ドローボールへのスイング改造に踏み切ったが失敗。
予選落ちを喫したが、「あのとき、絶対にドローしか打てないドライバーを使うとか、もっとクラブに頼る柔らかい発想があれば、なんとかなったかもしれない」と、振り返る。

2005年に米ツアーに参戦。帰国後に低迷する選手は多いが、谷原には当てはまらない。
「失敗しても、必ず掴んだものがあるはず」というどん欲さと、底抜けのプラス思考で一昨年は賞金ランク2位、昨年4位は、賞金王にもっとも近い男と言われるひとつのゆえんだ。

3日目にアルバトロスを記録しながら、「2位狙い」と断言するしかなかった先週から一転、追われる身に「明日は、もっと離してやろう、という気持ちでやる」と言い切った。

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