Tournament article

UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2008

片山晋呉「勝ちたい、と思って万全に用意してきた」

練習の前に必ず行う中村俊介トレーナーによるトレーニングとストレッチ。体操選手並みの体の柔らかさは、日々のこんな努力で培われている。
開幕を翌日に控えた2日(水)。ディフェンディングチャンピオンは9時半にコースに来るなり約1時間半のトレーニングとストレッチ。そのあと、11時から練習場で打ち込み。パッティンググリーンで球を転がしたあと、練習を切り上げた。

この日の調整は、3時間あまり。
あえて、ラウンドには出なかった。
コースの下見は、「昨日までにすべて完了したから」。

むしろ、知らず知らず入ってしまう気合いを抑えるのに懸命だ。
今年は連覇のほかに、数々の記録がかかっているからだ。

まず、永久シードが与えられるツアー通算25勝まで、あと1勝という状況で今大会を迎えたこと。
そして、5月の日本プロに続く今年2つめの“日本”と名のつくタイトルを取れば、この先10月の日本オープンと12月のゴルフ日本シリーズJTカップを合わせた、いわゆる“年間グランドスラム”の達成にまた一歩、大きく足を踏み出せる。

「今週は、これまでになくモチベーションの入れ方が違う。先週の日曜日からコースに来て、練習量も普段以上。自分で冷静に見ても、すでに試合が始まっているのかな、というくらい気合いが入ってます」。

昨年大会はそれとは対照的だった。
ツアープレーヤーNO.1を決める今大会は、のどから出るほど欲しかったタイトル。
しかし周到な準備を重ねるほどに難コースに跳ね返されて、打ちのめて家路につくのが常だった。
現状を打破するために取ったのが「破れかぶれ」作戦。

練習も、練習ラウンドも一切せずぶっつけ本番で初日を迎えた。
「2日で帰ろう」。
予選落ちを覚悟して、ウェアも2日分しか用意せず、1打差3位での思いがけない決勝進出に、メーカーのスタッフが慌てて残り2日分を追加したほどだ。

例年とはまったく違うスタイルの戦いが奏功したのか。
念願のタイトルを勝ち取った。
そして、今年はまた「勝ちたいと思って万全に準備をしてきた」と、片山はいう。

今年の宍戸ヒルズは66ヤード伸びて、トータル7280ヤード。
2番ホールに新しいティグラウンドを設置して、470ヤードのパー4から519ヤードのパー5に変更した。18番パー4は、437ヤードから454ヤードへ。
ところによっては、150ミリまで伸びたラフも相まって「どのホールもますます気が抜けない」。
難易度がさらに増したコースで昨年大会とは一転、再び一心不乱に頂点を狙っていくと決意した。

「日本と名のつく大会を狙って獲ったときの快感がやっぱり僕は好きだから。それでまた難コースに跳ね返されるのか、受け入れられるのか…。でも去年より、自分が上手くなっているのを感じるから。今年はそういう自分を見ていただきたい」。

日本プロのあと、「出来るだけ早く次の25勝目を達成したい」と話した。
しかし、その翌週のマンシングウェアオープンKSBカップで2位。
三菱ダイヤモンドカップは3位。
ファンに気を持たせたまま渡米。全米オープンからのこの帰国第1戦を迎えた。
「もしまた勝てたら、この大会には何かある…って、そう感じるのかな。そういうことを、僕はこれまで何度も起こしてるから。今年は、そんな自分に期待してやろうと思います」。

昨年の真逆のプレースタイルで挑む大会連覇。
ただし、これだけは昨年どおりだ。
大会前日に、父・太平さんの墓参りに行く。
先週の土曜日に命日を迎えた父に、今年も4日間の健闘を約束しに行く。


関連記事