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中日クラウンズ 2008
近藤智弘がツアー通算4勝目
それまではどちらかというと、淡々とプレーするタイプだった。
胸のすくようなキレ味鋭いショットとは対照的に、どんな局面でもその表情はほとんど動くことがなかった。
もしかしたら、それが勝負への意欲をストップさせていたのかもしれない。
プレーオフは過去に2勝3敗。
「アマチュア時代も含めたら、もっと負けてる」。
今年3月にその理由に気がついた。
シンガポールのセントサゴルフクラブで行われた全英オープンアジア予選。出場権が与えられる上位4人のうち2枠をかけて、3選手でのプレーオフに挑んだが4ホールの末に、13メートルのバーディパットを決められ敗退。
「いつもプレーオフは、それまでの72ホールと同じ雰囲気で臨んでしまう」。
どんなことにも動じない精神力は立派だが、「それではいけない」。
大事な局面で必要なのは「バーディを取りに行く、という強い気持ち」だ。
その約2週間後に控えたジャパンゴルフツアーの開幕を前に、テーマを決めた。
「今年は、攻撃的なゴルフをする」。
そんな決意が、ラウンド中の仕草や行動に自然と現れていた。
そしてその思いは、難攻不落といわれる和合を前にしても変わらなかった。
攻めのスタイルが、前日3日目のホールインワン(4番)を生んだ。
2打差2位タイからスタートした最終日も、スタートから積極的にピンを狙って単独首位に躍り出た。
最終18番で藤田に並ばれたが覚悟はしていた。
「すんなり勝てるわけがない。気持ちを強く持っていないとチャンスはない。ここで負けたら一生勝てない。そのくらいのつもりで、今日はバーディを取って勝つ」。
最後まで貫いた攻めのゴルフは、その2ホール目にピークを迎えた。
フェアウェーから残り133ヤードの第2打は、ピン左6メートル。
「下りの軽いフックライン」がカップに沈んだ瞬間だった。
体が自然と動いていた。感情がほとばしり出た。
右の握り拳を天に向かって何度も何度も突き上げ吠えた。
「地元開催の中日クラウンズで勝つことが、小さなころからの夢だったから。これまでの悔しさがすべて吹っ切れた。こういう勝ち方が出来たらいいな、という展開で勝てたこともすごく嬉しい!!」。
あふれ出る喜びに任せ、詰めかけた1万2478人の大ギャラリーに約束した。
「来年の50回大会は、連覇を狙って頑張ります」。
拍手と歓声はしばらく鳴り止まなかった。