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三井住友VISA太平洋マスターズ 2009
2週連続Vを狙う、武藤俊憲
前日3日目は、最終組で米ツアー3勝の丸山茂樹とラウンドした。初めての同組で、そのオーラに圧倒されたのだ。
「やる前から負けていたと思う」と、2打差の3位タイに後退。
しかしおかげで首位の丸山と組が離れたことで、内心ホッと胸をなで下ろした。
「最終日も一緒だったら、優勝できたかどうか分からない」と、武藤は優勝インタビューで振り返ったがその丸山は、あとで「武藤くんと回りたかった」と残念がった。
昨年、米ツアーから帰国してすぐに、丸山が目をつけていた選手の一人が武藤だった。
練習場で、「後ろから見ていていい?」と断って、武藤の練習を見つめていた丸山はポツリと「武藤くんはとても良いショットを打つ。これからますます強くなる」と断言したとおり、最終日は世界のマルも認めたドライバーショットに加え、小技も冴えて、丸山も「出来過ぎ」と改めてべた褒めしたボギーなしの64は完璧な内容で、逆転のツアー通算3勝目をあげたのだった。
2006年にツアー初優勝をあげて以来、谷口徹の「プロは遠慮していたらダメ。良い子はいいが、勝負には貪欲にならないと」と口を酸っぱくして言われていた。
昨年ツアー2勝目をあげて、少しは前向きになったとはいうものの、控えめな性格は相変わらずだった。
そしてまたひとつ、勝ち星を重ねた今こそ、貪欲に行きたいところだが、「今週はまずはきっちり予選を通過して…」と何勝しても、変わらない。
それでも、恩義に厚い選手は恩人のことを思うと、自然と気合いが入る。
優勝した夜は、マネジメント契約を結ぶ「ホリプロ」のみなさんが「武藤くんの祝勝会をしよう」とさっそく集まってくださった。
「そうやってすぐにお祝いしてくださる気持ちが嬉しくて…」。
みなさんが心から喜んでくださる顔が、さらに本人の喜びをも倍増して「僕ももっともっと頑張らなくちゃ!」という思いを新たにしたという。
優勝争いをした翌週というのに、日頃のたゆまぬトレーニングの成果で、疲れはまったくない。
また、現在トータルドライビングは依然として1位をキープして、もっとも飛んで曲がらないショットは今週も健在だ。
「今週も最低でも優勝争いがしたい。もっともっと上を目指す」と、少ない言葉の中に、決意をこめた。