Tournament article
The Championship by LEXUS 2009
首位タイの丸山茂樹は「遼くんがいないときは、僕が頑張らないと!」
もともとフェードヒッターは、特に左からせり出す木にも過剰反応してしまう。ティグラウンドに立つと、息が出来ないほどのプレッシャーに襲われる。
「いつ窒息するか分からないくらい……。息苦しくて死にそうです」。
眉間には最後まで深い皺が刻まれたまま。ほうほうの体でホールアウトしてきた様子はまさか、この日7バーディを奪って返ってきた選手とは思えないほど。
それほどの思いをしながらも、5アンダーの首位タイ発進が出来たのは、「やっぱり、ベテランだからですね」と、ちょっぴりおどけて胸を張る。
若きスターの不在にも、気合いが入った。
賞金レースを争うランク1位の池田勇太と、同2位の石川遼の不在にツアーきってのムードメーカーは「遼くんがいないときは、僕が頑張らないと」と、初日から大勢のギャラリーを引き連れて、気合いが入った。
9年間戦った米ツアーでスランプに陥って、傷心の帰国をしたのは昨年9月だった。日本ツアーに本格復帰して1年目の今年は、自身初の「賞金王を狙う」と、復活をにらんで迎えた。
しかし、ティショットの不振で思うような結果が出せない。むしろ、試合をこなせばこなすほど恐怖心は大きくなった。
プロ18年目。デビュー当時は丸山も、石川のように怖いもの知らずだった。
「遼くんは、まだ人生のジャブを食らってないから。僕も、あのころは何をやってもうまくいったもんです」。
しかし、今は積み上げてきた経験の数々が、丸山を脅かす。
先週は、アジアンツアーのバークレイズ・シンガポール・オープンの2日目に、15番でダブルパー(8)の大叩きを打って予選落ち。
「あのときだって、練習ラウンドでは超一流だったんです。でもコースで急変する。そのギャップに耐えられなくて」。
ティグラウンドに立ったときの不安が去らないことにはどうしようもないが、まだその兆候は見えてこない。
「でもそこらへんをなんとかやっつけないと」と、この9月から絶好調期に使っていた350CCのドライバーを引っ張り出してきたり…。
どうにか復活のきっかけを掴もうと、心を奮い立たせる毎日だ。
先日は、某ゴルフ雑誌に光を見付けた。
ジャンボ尾崎が語っていた。「自分はスランプから脱出するために7年かかった、と。僕は2005年から数えて6、7、8、9…。あと2年の辛抱ですね」と自らに置き換えて、ようやくこぼれたマルちゃんスマイル。
「イップスやスランプは、一流選手こそかかる」との言葉も励みだ。
「これも誰もが通る道。首位にも安心出来ないけれど、静かに見守ってもらえたら」と、頭を下げた。