Tournament article
フジサンケイクラシック 2009
石川遼は首位キープ
2オンが目標の3番パー5(570ヤード)で、残り279ヤードからスプーンで打った第2打は、小気味よい音でグリーンを捉え、カップに向かって一直線に向かっていった。
わずか50センチのイーグルパットを楽々と沈め、一気に5打差をつけて、早々と独走態勢を築いたことで、かえって17歳の胸に不安が生じた。
「難しいコースで、本当にこんなに伸ばしちゃっていいのかな、と。そういう気持ちになってしまって」。
そのあとは、「攻めればいいのか、守ればいいのか。どういう気持ちでプレーすればいいのか。難しく感じてしまった」という。
片山晋呉とも、その状況について話したことがあった。
片山は、昨年の日本プロで最終日を前に7打差をつけて優勝した際のことを振り返り、「凄く気持ち悪かった」と言っていた。
「片山さんは、“競っているときのほうがよほど楽だ”と。みんなが勝って当然という目で見ている中で、負けたらどうしようというのが頭の中を何回もよぎったと言っていて……」。
それとは、状況が少し違うかもしれないが、やはり「どう攻めればいいか分からなくなった」と言っていた片山の心模様とは一致する。
「トップを走り続けている者の特典ではあるのだけれど」と、石川。
真の強者にしか味わうことの出来ない領域で「先週もそうだったのだけれど、3日目にブレーキをかけてしまうというか」。
気持ちの中で、立ち往生してしまったという。
池絡みの7番、9番などは、これまで常にピンだけを見つめてきた石川が、攻めあぐねた場面だった。
「ここで、ピンを狙っていいのか、右に向かって打っていくのが正しいのか」。
中途半端な気持ちのままでコースを折り返し、そしていよいよ後半の11、13、14番でボギーを打ったのは、「経験の浅さ」と、振り返る。
同時に「続けてボギーが来たことで、目が覚めた」。
同組の久保谷健一も「あそこでもう1回立て直せるのが、彼の偉いところです」と感心したように、15番から3連続バーディを奪い、首位を死守した。
石川も「鬼門」と言った3日目の気持ちの持っていきようはまだ解決していないが、それはまた次回の「課題」として、2位と2打差で迎える最終日は「もう、ああいう気持ちはうんざりですよ」と苦笑した。
「ここで誓います。絶対にもう後ろは振り向かない。3日目の自分にリベンジしたい」。
もう迷わない。残り1日。「これからが、頂上にむけて険しい道のり。アクセルしかない」。
今月17日に誕生日を控え、17歳最後のトーナメントを今季3勝目で飾ってみせる。
<こぼれ話>
いつもカラフルな色合いで魅せてきた石川が、18歳を目前にイメチェン?!
この日は、ギャラリーのみなさんの中から「あれ本当に遼くん?」とか「いつもと違うね」といった声が聞かれたが、それこそ石川が狙ったところだった。
デビュー以来、試合で初めて選んだというブラック&ホワイトのちょっぴり大人の雰囲気漂うシックなコスチュームは、本人ももっとも話題に触れてもらいたかった部分だったようで、「みなさんに珍しいな、という目で見られることで、気合いを入れたかった」との意図があったそうだ。
さて、いよいよ最終日はどんな出で立ちで楽しませてくれるのか…!?