Tournament article
VanaH杯KBCオーガスタゴルフトーナメント 2010
現在、賞金1位の藤田寛之は「僕はがっついてないほうが」
「楽しんでやればいいじゃないか、と。あんなこと、言ってくれたのは初めてでしたね。ちょっとは、僕を認めてくれるようになったんだと思う。あとは、僕が苦しんでいるのも、分かってくれているんでしょう」。
賞金ランキングは堂々1位で帰ってきた息子。
しかし、いまは低迷期の真っ直中に突入し、全英オープンなど海外メジャーも含めて、先週まで6試合連続の予選落ちを喫した。プロ入り以来、初めてといっていい屈辱を味わっている。
その2つの状況が、お父さんの労いの言葉につながったのだろう。「親父のおかげで、少し気が楽になった」という。
また、先週末は、「珍しく」師匠から電話が入った。
芹澤信雄は、受話器越しに開口一番。「大丈夫か、落ち込んでないか?」。何か教えて欲しいことがあったときに、藤田のほうから電話する、というのが普段のパターンだっただけに「芹澤さんの電話は正直、驚きました」。
同時に、気にかけてもらったことが、嬉しかった。
昨年覇者として挑んだ先週の関西オープンも、決勝ラウンドにすら進めず、「コースでは落ち込みましたけど、今は大丈夫です」と応えると、「あまりガツガツするなよ。2日くらい、クラブは握らなくていいんじゃないか」と言われて、ますます肩の荷が下りた気がしたという。
「でも結局、クラブは握りましたけど」。
いつもみたいに、根を詰めて打ち込まなかった。
その分、多めに時間を割いた練習メニューが「チーム芹澤の右手一本ドリル」。
右手だけでショートアイアンを握り、30〜40ヤードのアプローチを繰り返す。
「不自由な分、体とのバランスが自然に取れて、フェース面もあってくる」。
会場入りしてから火、水曜日も続けている。
「かといって、全然良くはなっていないけど」。
しかし、ショットの絶不調は、あえて気に病まない。
「今週も暑いし、頑張ったらやばいですから」。
賞金ランク2位の谷口徹との差も、わずか10万円あまりだが「いっそ、早く抜いて欲しいくらい」。
これだけ調子の悪さを自覚しているにもかかわらず、ランクトップという立場が、居心地悪くて仕方ない。
「僕はこれだけ悪いのだから。誰か調子の良い人がさっさと抜いて、突っ走って欲しいくらい」。
いまの状態で無理にしがみつくつもりはさらさらないし、「こんなふうに、がっついてないほうが、むしろ良い結果に恵まれるかも」。
確かに、眉間に皺のラウンドよりも、穏やかな笑みのほうが、この人にはよく似合うはずだ。