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ツアープレーヤーたちのオフ報告<片山晋呉>
「おお・・・相変わらずあっちは色々やってるみたいだなあ・・・」。
そう言って、声のするほうに向かって大きく手を振った。
「お〜い、シンゴ〜!!」。
「あ、谷口さんだ〜。お疲れさまで〜す!」。キャッチボールの手を止めて、無邪気に応えたのは片山晋呉だった。
谷口徹が、宮崎県のフェニックスカントリークラブで合宿をスタートしたのは先月末の28日。片山はその前週に、一足先に現地入りしていた。男子ツアーの2トップが偶然、同じ場所で顔を揃えたが「コースで、シンゴと会うことはない」。
谷口は、本番さながらのラウンドに精を出す。
それとは対照的に片山は、約3週間の合宿中はいっさいクラブを握らない。広大な練習場の片隅で、ひたすら体作りに余念がない。
そのトレーニングメニューは実に多彩だ。
朝6時に起きてランニング、ストレッチに始まり、キャッチボールにサッカー、テニスに…そして、たまに息抜きの釣り?!
夜8時まで四六時中ハードに体を動かしながら、小休止に練習場奥のため池で、気ままに釣り糸を垂らす。
厳しい表情で前屈ダッシュをしていたと思ったら、今度は釣り糸が引けたといってワイワイと大騒ぎしている。
「ものすごくキツイけど、でもとっても楽しい」と評判の片山の合宿には、ツアープレーヤーの広田悟や女子プロの北田瑠衣選手も参加していた。慣れないキャッチボールにぎこちなく球を投げる北田プロに、片山がお手本を示してみせる。
「こうやって、体重移動して力をボールに伝えて…。ゴルフと同じだよ。30分くらい(キャッチボールを)やったら、すぐにゴルフがすんごく上手くなるんだから!」。
一見、何のつながりもなさそうなメニューの数々にも、実はゴルフ上達の秘訣が一杯詰まっているようだ。
片山の送球を受ける広田も納得顔でうなづきながら「グラブの真ん中で球を受けられたときって、ほんとに気持ちいいスね〜!!」と、なんだかとても楽しそうだ。
退屈になりがちなトレーニングを飽きることなく持続させ、しかも飛躍的にレベルアップできるすべを片山は知っている。
昨年、シーズン途中に言ったものだ。
「僕がやってきたトレーニングを、体格に恵まれた今の若い子たちがやったら、世界でも十分通用する選手になれるよ!」。
昨年は4年連続の賞金王こそ逃したが、本人も「世界でやるには小さい」と自覚している体格を補うにあまりあるトレーニングを積み重ね、年々ますます進化をとげていく。
先月末の時点では、本格的な打ち込みは「まだまだ先になりそう」と言っていた。
「いつからかって? まだ全然見当がつかないけれど、もうこれで良いって思ったら、急に打ち始めるかもね」。
4月のマスターズまでに、海外遠征もいくつかスケジュールに盛り込む予定という。