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日本プロゴルフ選手権大会 1999
意気消沈の尾崎健夫
尾崎健夫がティショットを打ち終わった瞬間、グリーン上で大きな歓声があがった。
前組でまわる弟の直道が、1番でイーグルを奪ったのだ。
その1部始終は、ジェットの目に焼きついた。
1番は、573ヤードのロングホール。難易度は17番目(4日間トータル)。
取れてしかるべき、サービスホールといえた。
ところが、そこで健夫は、バンカーからの第2打をダフってしまう。
気を取りなおして打った第3打は、グリーン奥のラフへ。
そこから3メートルに寄せたが、入らずボギー。
動揺は、次の2番で現れた。
200ヤードのショートホール。
ピン手前約13メートルに乗せてこれを80センチに寄せたが、このパーパットをはずして、まさかの2連続ボギー。
最初あった4打差の貯金など、すぐに消え去った。
いっきょに並ばれ、兄は弟に、首位の座を明渡した。
その後も、たびたび沸き起こる前組の歓声を聞きつけて、はじめ健夫の最終組についていた大ギャラリーは、次第に弟の組のほうへ吸いこまれていった。
通算2アンダー、首位と3打差。健夫は、再び、6年ぶりの優勝を逃した。
だが、この日の主役は、弟・直道だけではない。
67回目の日本プロゴルフ選手権は、直道、将司、そして健夫。
尾崎家の3兄弟が揃ってこそ、今年の舞台は、よりいっそう華やかに仕立てあげられた。
「1番でさ、イーグル獲ってはしゃいでる直道が、しっかり見えたんだ。
あれが結果的に響いたね。あれで第2打が冷静に打てなかった。イーグル獲ってもいいくらいのホールで、ボギースタートなんてね…。つまづいてしまったんだね。
でも、1番はそれほどショックではなかったんだけど、次の2番。これは本当にショックだった。たった80センチをはずすなんて。自分でもびっくりしてしまったくらいだよ。
それ以降、ロングパットを打つ勇気がなくなってしまったんだ。
きょうは完全に自滅だね。
誰かに、まぐれでも勝たしてもらいたい。
ショットも、アイアンの切れも、全部いいんだ。でも勝てない。
1週間くらいのうちにきょうのショックは忘れると思うけど、でもまた次に最終日、最終組になったときなんかに、きょうのことは思い出すんだろうな。
あと、こういうことを10回くらい繰り返すつもりで、そのうちの1回を勝たしてもらうような気持ちでやっていくのがいいんだろうね。
きょうはショックだ。ほんとうに、ショックだよ」