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パナソニックオープン 2016
スマイリー・フェイス! 市原弘大(いちはらこうだい)が単独首位に
最後の9番のティショットは、右からの風に持って行かれて左の木の下。「前は空いていたけど、球は上げられない状況だった」。残り120ヤードの2打目は6番を持って、低い球で転がした。狭い花道を器用につたって、しぶとくピンの左に乗せてきた。
「今年は、3月頭と終わりに1週間ずつ」。初参加の昨年オフシーズンから2年連続で谷口徹の恒例の宮崎合宿で「勉強になることがあった」。“初年度”は、ショットのあまりの不振にそれどころではなかったが、今年は「見て学ぶ」余裕があった。
「谷口さんはどんな所からでもイメージを出して打って、妥協しない」。
控えめで、謙虚な性格はいいが、「自分は変な意味で、自分のゴルフを過小評価していた」。とりあえず「真ん中に乗せておけばいい」とかゴルフまで、控えめでは勝てはしない。「貪欲に行かないといけない」と、谷口から教わった。
トレードマークの長尺パターを、再び引っ張り出してきたのは先週からだ。今年から、パターの一部を体につけて振る、いわゆるアンカリングの禁止が施行され、その対策にと短いパターで戦ってきたこの2年。
14年には2年ぶり3度目のシード権の復活にも成功して、短いのでもやれないことはなかったが、どこか違和感がぬぐえなかった。「僕の場合は、もう10年以上も使って長尺で、フィーリングが出来上がっていたので」。それでもルール改正に伴いいったんは手放したが、今年のマスターズでウロコが落ちた。
58歳のベルンハルト・ランガーが、長尺パターで大活躍。
「ああ、使ってもいいんだ、と。ランガーのインパクトは大きかった」。
思えば、シーズン2戦目の「レオパレス21ミャンマーオープン 」を制したアジアンツアーのショーン・ノリスも平然と長尺で勝った。
特に風のある日は規則に抵触しないように、シャフトが体に触れないように、その点では気を遣うが「もともと、自分は体にぴったりつけて振るタイプではなかった。工夫して、なんとか対応できる」と、慣れ親しんだ46インチのパターは、さすがに手に馴染んで「微妙なタッチは、やっぱり長尺のほうが出てるかな」。
2年ぶりの原点回帰でV争いに名乗りを上げた。
2001年のプロ転向でまず挑戦したのも、09年に“初シード”を果たしたのも日本より、アジアンツアーが先だった。3年ぶりに復活した今大会は、アジアと日本の共同主管で行われており、勝者にはいずれのシード権も得られる市原の今大会の思い入れは強い。「またアジアでも戦いたい」と、今年1月のアジアシリーズ2戦で、さっそくメンバー登録も済ませてある。
両ツアーとほぼ半分ずつ出場資格を分け合う今週は、日本のファンにはなかなか馴染みのない顔ぶれも、「僕には知らない選手がいないので」。1打差の2位に迫ったインドのカプールは親しげに、「スマイリー・フェイス」と市原を呼んだ。舞台も、フィールドも“ホーム”の居心地で初勝利を狙っていける。