そして「屈辱」の「※(こめ)印)」は、まさか、まさかの我らがキャプテン。今年のチーム最年長の46歳。谷口徹は初めてのスナッグゴルフ大会に最初から、戸惑いを隠せず、それでもなんとか子どもたちの熱戦ぶりを参考に「だんだんコツが掴めてきた」と、尻上がりに調子が出てきたものの、9ホールの短期決戦では、遅すぎた。
「わざとトップをさせて、距離を稼ぐ子。どこに落とせば、どれくらいのランが出るか。子どもたちはみんな凄くよく研究していて驚いた」と、谷口も懸命に戦った。
カップならぬ、ボールをくっつけてホールアウトとする、マジックテープ付の的に最初、谷口は「キャリーで当てようとしていた」。しかし、それでは外したときに、大きくオーバーしてバーディすら臨めなくなる。
「そうか、手前でワンバウンドさせれば」とひらめいて、7番からまんまと連続イーグルも、最終ホールは「アルバトロスだ!」と、がっついた途端に、せっかくの策も忘れてまた、的をダイレクトに狙って「テンション激下がり」のバーディに終わったときに、嫌な予感はしていたのだ。
上がってきて、巨大なスコアボードを確認して改めて愕然・・・! その時点ですでに上がっていた山下和宏は26ストローク。近藤龍一は25。そして谷口は27に、悲鳴を上げた。「俺、やばい・・・!!」。
誰もが恐れた「※印」。つまり、チームスコアにすらカウントされない選手の証しが成績表につくのは俺なのか・・・?!
それでもなお望み(?)を託して「まだアトムがいる」。
スタート前から、谷口が「今日の※印」と決めてかかっていた重永亜斗夢がしかし、なんと23で上がったとの一報が入るなり、谷口は机に突っ伏した。あっという間に元気を無くして、うなだれた。
ホールアウト後のエキシビションでは、プロ6人と子どもたちが異種競技で争う対抗戦に、けん玉でエントリーしたキャプテンは、直前の集中特訓の甲斐あって、みごと腕に覚えのある小学生に勝ち越して、一瞬笑顔は見せたものの完全に気が晴れることはなく、「悲しいです。今日は屈辱的な1日です」。
小学生たちの前でも悔しさを隠すこともしなかった。
それにしても、過去2度の賞金王すら舌を巻いたのは、この日の子どもたちだ。とことん勝つことにこだわり、台風11号による雨にもマケズ、貪欲に戦う小学生たち。
「ホールインワンとかアルバトロスとか、目の前でいっぱい見せられた」と、それもまた悔しさをあおる材料も、子どもたちの逞しさを感じた。
一方で、ちょっぴり懸念も。ホールアウト後のエキシビションで、プロ6人によるドライビングコンテストを披露したように、ホンモノのゴルフの醍醐味は、胸のすくようなドライバーショット。思い切り振りちぎった豪打の気持ちよさ。
「スナッグゴルフでも、そういうプレーを目指して欲しい」と谷口は願っている。
小手先で飛距離を稼いだり、ちょこんと距離を合わせにいったり、そういうプレーばかりに慣れてしまうと、小さくまとまったゴルフしか出来なくなってしまう。
勝つことももちろん大事だけれど、もっと大切なことは「勝つために全力で努力をすること。その過程を楽しむこと」。あまりに若いころから勝つことにこだわりすぎるとゴルフ本来の道から外れて、本質を見失ってしまう危険もある。
みんなには、そんな風になって欲しくない。
子どもたちの健やかな成長を祈って「これからもスナッグゴルフを精一杯楽しんで下さい」と呼びかけた。
「そしていつか、この中からプロゴルファーになって、僕らプロと一緒に戦う子が出てきてくれたら嬉しく思います」。
子どもたちに向かって大きく手招きをした46歳のベテランは、「みんながトーナメントに来るころには僕はもう、その舞台にはいないかもしれないけれど」と、そこは自嘲の笑みで、「若い近藤プロや、重永プロは、まだ頑張っていると思います」と、次世代に希望を託して「ぜひいつか、ツアーの舞台で再会しましょう!」。
今日という日の思い出を胸に、また逢う日まで・・・!
大会全成績は「こちら」をご覧ください。