来週21日からここで、ダンロップ・スリクソン福島オープンが始まる。その直前の、最初の大事なプレイベントといってもいい。それは子どもたちだけでなく、プロゴルファーたちにとっても重要な“前哨戦”となった。
今年もドリームチームを編成して駆けつけた。主催のJGTOを代表して5人の精鋭を引き連れてやってきたのは、我らが孔明。今年の“キャプテン”は、各地区予選を勝ち抜いて、晴れ舞台を迎えた今年の28校を前に、開会式でいきなり爆弾発言をした。
「負けたら僕ら、全員坊主になるよ!」。
夢のチームを結成して「スナッグゴルフ対抗戦JGTOカップ 全国大会」にプロゴルファーが参戦するようになって6回目になる今年は雪辱戦だった。
昨年は、初めてドリームチームが優勝校に敗れたのだ。リベンジするためにはそのくらいの覚悟が必要と、孔明キャプテンは考えたようだったが、「聞いてないよ!」。一斉に声を揃えたのはメンバーたちだ。今朝の打ち合わせにも一切、出て来なかった、寝耳に水の話。たまったもんじゃない!
しかし2年連続出場の片岡大育(かたおかだいすけ)は、敗北をなめた昨年チームの一員だけに、大きなこともいえない。「僕の頭はすでに、坊主みたいなものですが…」と控えめに、どうにかこれ以上、大事な髪を失わずに済む方策はないものか…。
「じゃあ、※(こめじるし)を坊主にしよう」と、まとまった。
「※(こめじるし)」とは、チームのワーストスコアを出した選手につけられる不名誉な印のことで、もはやチームスコアにもカウントされない。いわば“みそっかす”一人に責任をなすりつける苦肉の策に、いっそうメンバーたちは燃え出した。
「ここにいる誰にも負けない。かかってきなさい!」と宣戦布告したのは、ドリームチーム誕生のきっかけを作った男。6年前に「俺らプロもチームを作って小学生と対戦しよう」と言い出したのは、薗田俊輔。
自身3度目、3年ぶりに戻ってきたこの舞台は、昨年まで3年連続で行われた仙台から、ここ福島県のグランディ那須白河ゴルフクラブのNASUコースに移ってきたのは、「宮城も、岩手も福島も、大変な目に遭いましたけど僕らそれらを乗り越えて頑張ってますと、今度は福島県の我々が、全国のみなさんにお伝えするため」とは、ご当地キャラのニシゴーヌちゃんと、ゴルバックを引き連れて駆けつけた開催コースの地元・西郷村の佐藤正博・村長だ。
「僕らも福島を、盛り上げる気満々でやって来ました」と引き受けた薗田は、“発起人”としても、やる気満々。みすみす坊主になる気も、さらさらなかった。アルバトロスが2つにイーグル3つ。バーディ3つのパー1つ。みごとなまでに有言実行の「21」は小学生と合わせても、文句なしのベストスコアをマークした。
初出場の永野竜太郎は、小学生の前でイーグル連発。何度もガッツポーズを作っておきながら「…大人げない」。渾身の22と、24ストロークの片岡は、カウントバックでどうにか面目躍如だ。
はてさて、今年から今大会ではルールが改定になり、6人中上位3人のスコアが採用にされることになったと後から知って、唖然呆然の「※(こめじるし)」プロ3人。
24ストロークを記録した浅地洋佑は、まだ良かった。そして秋吉翔太は、「今日の※(こめじるし)はきっと翔太」との、最初のみんなの見込みどおりだった。今大会は初出場で、ましてスナッグゴルフもほぼ初心者で、前夜はユーチューブで勉強してきたと一夜漬けも空しく、スタート前の練習場でも大だぶり。アイアンならぬ、ランチャーを空に向かって投げ飛ばした様子には、秋吉のこの日の結果にもうすうすは予想がついたが、その秋吉と並んで「26」はまさかまさかの今年の「※(こめじるし)」は、なんと孔明。
イーグル2個も、「パーが2つもあったら、もうダメだ」と、最終ホールの9番パー5は、せめてアルバトロスとがっついても、イーグルを奪うので精一杯。
秋吉と並ぶ26ストロークは、しかし「今年の俺のゴルフどおりだ」と、ひそかに合点がいったりして…。
2014年の賞金王も、今シーズンは「何やってもダメ」と、ちっとも元気がない。「今の状態を、そのまま現している」と、スナッグゴルフでさえも、きっちりと今の結果が如実に現れ、改めて知るゴルフの深さ。
言い出しっぺがまさか自身の術中にハマるとは…。賞金王のスコアに興味津々集まってきた。小学生にも「俺、プロに勝った〜!!」と、口々に自慢をされて、あぁ情けないやら……。
「わざと負けてやったんや」と負け惜しみ?!
いやいや孔明は、気は優しくて力持ち! あえて自ら悪い見本になって、子どもたちに喚起をうながす。
成績発表の前のエキシビションでは各種目別のリフティング大会で、ランチャーで器用にボールを扱いながらもズルをして、子どもたちの進路をわざと妨害しに行ったがために、真っ先に脱落した。
子どもたちに、「ずるい」とやんやと責められごめんなさい。「人は悪いことをすると、こうなるんです」と、孔明の反面教師。
それでも最後はドライバーのデモンストレーションで、飛ばし屋の業師はドロー、フェードと豪快に打ち分けて、さすが賞金王の誉れを取った。子どもたちの前で手本を打つうち、不振脱却のヒントも掴んだ。
「今年はずっと調子が悪かったけど、今日は3年前のようなショットが打てた。ここに来た甲斐が出来て良かった」。
昨年大会のリベンジどころか子どもたちの前で屈辱の「※(こめじるし)」など違った意味で、何かとこの日の主役となり14回大会を盛り上げた今年のドリームチームのキャプテンは、次週からここ福島で始まる大会を前に、何よりの1日を過ごしたようだ。
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