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小田孔明 獲り損ねた3つ目の優勝杯(プレイバック2019開幕戦)
2019年の昨年大会では、小田孔明が強風に耐えて、米のデービッド・オーと通算10アンダーの首位で並んだ日。
さらに1差の3位には、出水田大二郎(いずみだだいじろう)。
孔明が、地元九州の若手をまとめる”チーム孔明”に、仲間入りをしたばかりの注目選手だった。
昨年は、おりしも翌月の改元を控えて、翌日の最終日最終組は、平成最後の試合で”師弟対決”だと話題になった。
2010年に、大会史上唯一の連覇を達成していた小田には大会3勝目と、賞金王に就いた14年以来となるツアー通算9勝目がかかっていた。
追いかける出水田は、前年の18年の「RAIZAP KBCオーガスタ」の初V以来の通算2勝目を目指した。
明暗が分かれたのは、さっそく最終日の2番だった。
ティショットを右の池に入れながら、なんとかボギーにとどめた小田に対して、左にOBを打った出水田は、トリプルボギーで転落。
結局、そのまま18位タイまで落ちたが孔明は、その後12番から3連続バーディなど猛然と挽回に転じて、最後の18番では7メートルものバーディトライをねじ込むなど粘りを見せた。
勝利こそ豪州のジョーンズに譲ったが、どうにか単独3位に踏みとどまり、意地を見せることは出来た。
「あの時は俺も、(出水田)大二郎も最初のほうこそお互い意識をして回っていたと思うんですけど、なんせ序盤は揃って悪すぎて…。途中からはもう、大二郎どころではなくなった。2つ前で回るジョーンズが伸ばしていたのも分かっていたし、自分のペースを取り戻すので必死。それで後半、なんとか自分は5バーディで盛り返すことができたんです」。
あとで、2人でほろ苦のV争いを振り返った際にも出水田に、ポツリと「ゾーンに入った時の孔明さんは凄かったです」と、言われて嬉しかったことを覚えている。
「優勝争いって、こうするんだよって、伝えられた気がして。目の前で見せられて、ほんとによかったと思いましたね」(孔明)。
今オフも、出水田ら若手と恒例の宮崎合宿を重ねて「今年も開幕からガンガン、優勝争いして行こうぜ」と話し合っていた矢先。
合宿の合間には、チームみんなを連れて参加した3月8、9日のツアー外競技「宮崎オープン(都城市・母智丘(もちお)CC)」で、最終日に62を出して優勝。
チームを引っ張る者として、順調な仕上がりを見せていただけに、リベンジの機会を新型コロナウィルスに奪われたのは、孔明も残念だ。
先日は、ついに全国に緊急事態宣言が出された。
「この状況では仕方ない。いつ開幕してもいいように、お互い出来る範囲で準備だけはしておこうよとみんなにも話している」と、後輩らにも気を配りつつ、今はそれぞれいつ終わるともしれない自粛生活を、粛々と送っている。
09年の「東建ホームメイトカップ」で、最初にもらった優勝杯は両親に捧げたが、連覇で獲った2個目は今も大切に手元に。
「来年こそ3つ目獲ってみせますよ」。
大会3勝目で、当時異名をとった”開幕戦男”の称号も獲り返してみせる。