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アジアの連覇はならず
1ポイント差で迎えた最終日のシングルスマッチは8.5対7.5で、僅差の敗退。
メンバーは、みな最後まで善戦した。小田孔明は、5&4の圧勝でチームにこの日、最初の勝ち点をもたらし、第1組のチャーリー・ウィは、土壇場のバーディで逆転した。
インドのジーブ・ミルカ・シンは、強敵カールソンを2&1で打ち負かした。
中国のW・リャンは、闘将モンゴメリーを相手に最終18番で、両者バーディフィニッシュで分けるしぶとさを見せた。
「負けるために戦う選手はうちのチームにはひとりもいない」とキャプテンの尾崎直道も言ったように、たとえマッチには敗れても最後の1打まで、諦めるものは誰一人おらず、とことんまで欧州チームを追い詰めた。
そしてゲームはついに、最終組のトンチャイ・ジェイディが勝てば、プレーオフという大接戦。
世界ランク7位のヘンリク・ステンソンと互角に渡り合い、17番で執念の1アップを奪い返して期待に応えたジェイディ。
「でも18番でパットが決められず……。ジョーキャプテンには本当に申し訳ないことをした」と、結局最終ホールのボギーで引き分けて、1ポイント足りずに敗れた終焉を、しきりに詫びたトンチャイに、直道は力強く首を振る。
「いいや、みんな本当によくやった」。
世界マッチプレー選手権や昨年、石川も経験したプレジデンツカップにライダーカップ。欧州チームがマッチプレーという特殊なゲーム方式に強いのは、場数をたくさん踏んでいるという理由もひとつにある。
その点、アジア勢にはなかなか慣れない中で、直道には「強豪相手にみな対等に戦ったという実感が非常にある」。
マッチプレーの醍醐味も、アジアの存在感も、存分にアピールできた。
「最後まで、みんなで力を合わせて大会を盛り上げてくれた。そのことが何より嬉しい」と直道が言ったとおり、清々しい負け方だった。
キャプテンとして、やりきったという充実感もあった。
選手のコンビネーションに頭を悩ませ、灼熱の太陽の下、精力的にコースを回った。
若い選手たちの戦いぶりに熱い視線を投げながら、ときおり思い立ったようにカートを降りて、その場でしきりに素振りを繰り返していたのは、自らも米シニアのチャンピオンズツアーの開幕が迫っているから。
「みんなのスイングを見ているうちに、おかげでイメージが膨らんだよ」と、あとで照れくさそうに笑った。
これから始まるシーズンに向けて、自らも大いに闘志がわいてきた。
大会を終えて、メンバーたちはみなめいめい自分たちの目的地に散ったがどこの国の、どのツアーで、何のトーナメントに出ていても、キャプテン・ジョーはどこかで必ず見ている。
「今年もこのままずっと、8人全員のことが気になると思う。みんなのこれからの活躍を期待しています」。
チームはひとまず解散だが、新年早々に培われた絆はいつまでも心に残る。
<最終日 シングルスマッチの結果>
<アジア 7.5:8.5 欧州>
1UP チャーリー・ウィvsサイモン・ダイソン
A/S W・リャンvsコリン・モンゴメリー
5&3 小田孔明vsアレキサンデル・ノーレン
2&1 ジーブ・ミルカ・シンvsロべルト・カールソン
プラヤド・マークセンvsパブロ・マルティン 2&1
石川遼vsピーター・ハンソン 5&4
ガガンジート・ブーラーvsソレン・ケルドセン 2&1
A/S トンチャイ・ジェイディvsヘンリク・ステンソン