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ABC チャンピオンシップ ゴルフトーナメント 2005
片山晋呉が、今季2勝目
朝日放送(株)の西村嘉郎・代表取締役社長がされたスピーチの内容を、片山は忘れていなかった。
「最後の最後まで分からない。今週は、そんなスリリングなプレーで盛り上げてください」。
最終日は、主催者の願いをかなえる大激戦。
リーダーボードは1日中、めまぐるしく動き続けた。
大歓声が、コースのあちこちで轟いた。
誰が勝っても不思議ではない。
そんな好ゲームを実現させたのは、もちろん片山だけの力ではない。
1打差2位でスタートした谷口徹。
最終ホールでイーグルを決めたディネッシュ・チャンド。
18番ホールで果敢に水切りショットに挑んだ林根基。
一時は首位に立ち、初優勝の期待を呼んだ菊池純。
最終日に追い上げた、丸山大輔。
共にしのぎを削った戦友たちがいたからこそだ。
片山が言う。
「僕じゃなくてもいい。きっと、誰が勝っても面白いゲームだった。たとえ5人のプレーオフでも、見に来てくれた人を興奮させることができた。この試合を見て、男子も捨てたもんじゃないってこと、みなさんに分かってもらえれば嬉しい」。
女子に比べ、男子ゴルフは元気がない、と言われることが片山には歯がゆくて仕方ない。
「男子だって、絶対に面白いから見に来て!」。
プレー中のパフォーマンスも、そんな思いに溢れている。
昨年のハッスルポーズに続き、編み出したのが『ワッショイ』ポーズだ。
この日つけたベルトには、バックルの部分にローマ字で『WASSHOI』ほか、6つのメッセージが出る仕掛け付きだった。
ギャラリーに喜んでもらえるようにと、さまざまなアイディアを用意して迎えた最終日。
しかしゲームの最後には、そんな周到な準備もいっさい忘れた。
ディネッシュ・チャンドと通算12アンダーで並んで迎えた18番ホール。
「本能のままに動いてた」。
5メートルのイーグルパットをねじこんで、息詰まる大混戦を制した瞬間、「思わず雄たけびを上げていた」。
全身をバネにして、4回、5回と飛び跳ねた。
両腕を突き上げたまま向き直り、キャディの石井恵可さんと感激のハイタッチ。
イメージは、「去年、マスターズで勝ったフィル・ミケルソンかな」(片山)。
計算する余裕もなく、心のままに喜びと感動を表現したパフォーマンスが大観衆の心を打った。