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ブリヂストンオープン 2010
片山晋呉がコース新の62で単独首位に
これまでは1日10アンダーが自己ベストだったが、何を勘違いしたか本人は、18番のバーディで11アンダー目をマーク出来たと思い込んでいた。
「でも実は、10アンダーだったんですね」と、照れ笑い。
ボギーなしの10バーディも、「ピンチは8番ホールの1回だけ。あとは全部チャンスでそれも半分以上がモノに出来た」と、あまりに完璧な内容も「遼くんならぱっぱっぱと思い出せるんだろうけど」と、苦笑い。「最近、物忘れがねえ・・・・・・」と、1ホールずつ、思い返すたびにおどけて顔をしかめる。
2007年の大会初制覇から、これで4年連続の最終日最終組だと思い当たるや、笑顔がパッと輝く。
「本当にこことは相性が良いんだねえ」としみじみと、「ここにいる誰よりも、優勝争いをしてきた。経験では、誰にも負けていない」と言った言葉に確かな自信がみなぎった。
先週は今年一番の目標だった日本オープンも16位タイに終わり、V戦線からしばらく遠ざかってはいたものの、ゴルフの調子自体は「ここ1ヶ月は、いつ来てもおかしくないほど良かった」と、その予兆はあった。
9月から握り始めた長尺パターは実はラウンド中に、背中の痛みを軽減するために、逆打ちの素振りをするとき用のクラブとして長さも重さもちょうどいいからという理由でバッグに入れたものだったが、グリーン上でも馴染んできた。
先週は、やはり長尺を愛用している中嶋常幸にアドバイスを受けたこともあり、「ようやく取り扱いが分かってきた」と、この日の大爆発につなげた。
愛用から10年。「そろそろ、もういいかな」と一度は脱いだトレードマークのテンガロンハット。しかし、「やっぱり晋呉はあれじゃないと」との周囲の声に、最近また引っ張り出してきた。
過去5度の賞金王が、優勝から見放されてもうすぐ丸2年になるが、「勝ってないのもいいもんですね」。
常に優勝争いの常連でいたころは、「とにかく勝ちたくてガツガツしていた」というが、このごろは俯瞰(ふかん)する心の余裕が出来てきた。
「前とは明らかに違う。かえっていろんなモノが見えてゴルフがやれている感じで、凄く楽しい。なんていうか、円熟味が増して来ている感じかな」。
近ごろは、以前にもまして積極的に若手の輪の中に入って、熱心に指導する姿がよく見られるようになった。9月の日韓戦では池田勇太とチームを組んで、後輩をグイグイと引っ張った。
今週も、妹で女子プロの眞里さんとのタッグで、ラウンド中も笑顔が絶えない。強い片山が帰ってきたが、それはきっとひと味もふた味も違う。
圧倒的な強さはそのままに、次のツアー通算27勝目には、これまでとはまた違った感動を用意しているはずだ。
※コースレコードをマークした片山には開催コースの袖ヶ浦カンツリークラブより、賞金30万円が贈られます。