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日本オープンゴルフ選手権競技 2011

プレーオフ敗退の久保谷健一は「申し訳ない気持ちで一杯」

ボヤキながら、いつの間にか目の前の裵相文(ベサンムン)と、優勝争いをしていた。この大一番で迎えた2週連続Vのチャンスにも、本人にはまるでその自覚がなかった。
「周りの人が騒いでいただけで、僕は何も」。

それよりも、とにかく目の前のショットを真っ直ぐ行かすことに懸命で、5打差の4位タイからスタートした最終日もなぜか、ちゃんとフェアウェイに打てたティショットにさえ肩を落とし、首をかしげ、何やらブツブツと言っていた。周囲には完璧にも見えるショットも本人には、納得のいく1打とは、ほど遠いのだ。

それだけに、自分が大接戦の渦中にいる実感も手応えもないままに最終18番を迎えたとき、後ろの最終組で回る佐藤が17番でボギーを打って、いよいよ目の前の裵(ベ)との一騎打ちとなったはいいが、ラフを渡り歩いて、3打目のアプローチを惜しくも外した裵(べ)に対して、自分も手前から3メートルの絶好のチャンスを外し、自らプレーオフにもつれ込ませておきながら、サドンデスホールの18番で、「もう、二度とティショットを打たなくていいな、と思っていたのに。もう1回って感じで」と、この期に及んでもまだ、ボヤく始末だ。

1ホール目に案の定、左に曲げて、「すでに賞味期限切れでした」と、ボギーの敗退にも、さばさばとしたものだった。先週の9年ぶりのツアー通算5勝目に続いて、このゴルファー日本一決定戦で、再び優勝のチャンスを迎えるという、誰もが羨むシチュエーションにあっても、この人にはまるで欲がない。

「今日アンダーパーで上がれたことは嬉しい。上出来ですね」とむしろ単独2位に満足そうに、勝った裵(ベ)にも脱帽で、「完璧でした。こういう人が、勝つべきなんだなって」。

ボヤキ続けたこの2週間。「耐え耐えで、やってきたので」。それでもこれだけのゴルフが出来るのだから、課題のティショットに懸念がなくなったら、いったいどうなってしまうのか。
「ショットがまともになればいけるって、自分で自信になりました」と自覚をするのもはたから言わせれば、ちょっと遅すぎる気はする。

ただし、昨年の金庚泰(キムキョンテ)に続いて、2年連続で“ゴルファー日本一”の称号を韓国勢に譲ったことに関しては、本人も一応は反省しきりで、この日は実に1万4872人の大ギャラリーにも、「その点では申し訳ない気持ちで一杯。2年前くらいのショットなら、勝負になったと思うんだけど。そういうのを、見せてあげたかったな」と、プレーオフにまで進んでおきながら、まるで今日は手も足も出なかったと言いたげなところがまた、この人らしい。

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