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ブリヂストンオープン 2014

小田孔明が今季2勝目、賞金ランクは1位を奪還【インタビュー動画】

孔明が1位を奪い返した。いま最も恐れる男を振り切った。2位とは3打差の首位で出た最終日はこの選手のことしか見ていなかった。藤田寛之との最初の差は5つもあっても、この男はいつ、どこから仕掛けてくるかも分からない。その影に怯えながらも前半こそ何事もなく折り返してついに、14番のグリーンで孔明が目を見張る。

スコアボードを二度見して、「うそでしょ・・・」と呆然と、なんと、その藤田に並ばれているではないか。
前日3日目に言った。「藤田さんは、目の上のたんこぶ」。その発言が、大先輩の心に火をつけてしまった。「たんこぶ」呼ばわりされて、藤田は黙っていなかった。
「は〜っ」と深いため息。まさかという思いと、やっぱりという思い。「まじでやばいぞ」と蒼白に、同時に「そこから気合いが入った」。攻めの孔明が本気になった。「ここで負けるわけにはいかない」。ここで藤田にみすみす優勝賞金3000万円を譲ったら、賞金レースも独走を許すことになりかねない。ファンの興味をシーズン終盤まで引っ張るためにも、「ここで僕が勝つしかない」と、自らにムチ打った。
そこから4ホールは目下賞金1位と2位との白熱のデットヒートで、獲って獲られての一騎打ちは、17番で1.5メートルのパーパットも「正直、手が震えていた」。こんな重圧は、久しぶりだった。「4年前に、イップスになって以来かもしれない」とボギーを打った。再び藤田に並ばれた。迎えた最後の18番こそ、攻めの孔明を貫いた。

やはり最後のパー5で刻んで、石川遼に敗れたのは7月のセガサミーカップ。
また、前週の日本オープンは、今年もまた悲願のタイトルには手が届かずに、「俺はどっかで守っている。攻めてない」と、そんな反省から心を入れ替え「今週は、絶対に負けない。自分が一番強いんだと思ってやる」と決めたからには、最後まで逃げたくなかった。

「池でもいい」と、最後はフェアウェイからの2打目を迷わずスプーンで振りちぎった。アゲンストの風に持っていかれて大群衆の中に飛び込んだボールは「当たった人がなかったか」と、その点でも気が気でなく、深いバンカーを挟んで右ラフからのアプローチは「10回打って、1回寄ればいい」。一か八かの大勝負。最終組でのV争いは、このあと誰も来ないからと大目にみてもらってトコトコと、そのままバンカーを横断して綿密な歩測は25歩目に「ここに落とさないと、寄らない」と、ピンポイントで狙ったロブショットは、今季は海外メジャー2戦の経験を駆使して見事、1メートルにつけても「最後は10メートルくらいに感じた」と、近くて遠いウィニングパット。「何でもいいから入ってくれ」と、しゃにむにねじ込み、嬉しいやら恐ろしいやら。

ここ千葉県は、東京学館浦安高時代の3年間を過ごした「第二の故郷」だ。駆けつけた旧友たちの前で、ツアー通算8勝を見せられたことは嬉しいには違いない。だがこの男の存在を思うと、心底喜びに浸る気にもなれない。
初日に73を打って、66位タイ。「藤田さんは最初はあんなに出遅れたのに。最後には、結局1打差まで詰め寄られた」と、改めてその勝負強さを思い知れば、たとえこの今季2勝で再び賞金1位を奪還して今度は孔明が、藤田の「たんこぶ」になっても、喜ぶにはまだまだ早い。「また1位にはなれたけど、藤田さんも今日は2位だし」と、両者揃って1億円超えも、思ったほど差をつけられなかったことには苦笑いで「賞金王になるにはあと1勝、2勝としなければ」と、気は逸る。
「今日のショットは一流だけど、パットは3流。あんなにチャンスにつけているのだから。今日はもっと楽に勝ててもいいはず。また練習しなくちゃ。またここからだ、という気持ちで頑張らなくちゃ」と、この先まだまだ予断を許さぬ藤田との決戦に備える。

孔明がこれほど賞金王にこだわるのは、その先にマスターズがあるから。前年のキングが招待を受けることが、もはや慣例とはなっているが、それでも用心深く「来年も、必ず呼ばれるとも限らないので」。
勝ち星にこだわるのもそのためで、確実に招待状を受け取るためにも「最多勝利数で今年こそ賞金王になって、最大の目標は世界ランクで50位に入ること」。孔明の野望はとどまることをしらない。


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