Tournament article
ファンケルオープンin沖縄 2000
「乗せられている、と感じるんです」
3位につけた中嶋常幸が、片山の強さをこんなふうに表現した。
「アカデミー賞をもらえる俳優並みの演技力。自分の世界を作る名人です」
それは、尾崎将司以上だ、と中嶋は言いきった。
「異次元に入ってしまうゾーンとはまたちょっと違うんだけど、つまりね、コースで主人公になりきれる、というか、役作りがうまいんだよね。あれは、計算されたプロのテクニック。それが、彼の強さといえるんじゃないかなあ」(中嶋)
3日目のこの日、2位の6打差の独走態勢に入った。逆転賞金王まであと一歩のところまで来た。
「でも、ここまでやってこれたのは、ぼくひとりの力じゃない」と片山は言う。
「正直言って、僕は普段は、『もうダメだ』『疲れた』とか弱音ばっかり。でも、そんな僕を、トレーナーの人、キャディや家族、いろんな人が『もうちょっと頑張れよ』と励ましてくれる。そう言われてはじめて、『もうちょっと頑張ってみようかな』って思えるんです。
僕ひとりだけじゃ、絶対に、ここまで出来なかったはず」
身内だけではない。片山が味方につけているのは、ギャラリーの声だ。
今季は「ワイルドなイメージを」とアゴヒゲを生やしたり、ビリヤードグリップと呼ばれる変則的なパッティングスタイルで、一味違う選手をアピールしたいと、さまざまな試みを続けてきた。
目下のトレードマークはテンガロンハット。今週は、3つ目を新調し、日替わりでファンの目を楽しませる。
そんな姿勢が、好感を集めたのだろう。
逆転賞金王の期待をこめて、ロープ際からかかるたくさんの片山への声援。
「それがすごくエネルギーになっています」と認める。
「これだけいいプレーができるのは、ギャラリーのみなさんに乗せられているからでしょう。
昨日の夜はね、久米宏さんのニュースステーションのスポーツコーナーで1番最初に紹介されたのがゴルフだったんです。いつもなら、ゴルフは最後のほうに少しだけでしょう?それだけ注目されていることがすごく嬉しい」
最終日、賞金ランク首位との最後の決戦。圧倒的なその強さでキング・谷口をねじ伏せて、“2000年の主役”をアピールするときが来た。