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日本プロゴルフ選手権 2008
片山晋呉が76代目のプロ日本一に
そのせいで、この日朝も早々と4時に目が覚めて、改めて心に誓った。
「今日は最後まで絶対に緩めないでやる」。
同じ最終組のリャンが1番、2番でバーディ。細川が2番でイーグルを奪い、ジワリと詰め寄ったが、「かえって気持ちが引き締まった」と、3番で1.5メートルのピンチをしのいだ。
7番から4連続バーディを奪っても、余裕など持てない。
12番でやはり1.5メートルのパーパットを残した。
いよいよこの週、初のボギーを打ったが「そのうち、出るものだから」と、その表情はピクリとも動かなかった。
6打差のリードをつけてなお、鬼の形相で迎えた最終ホール。長いバーディパットをOK距離につけて、ようやく安堵の笑みがこぼれ出た。
通算23アンダーは、88年大会で尾崎健夫が記録した20アンダーを上回る、大会最多アンダーを更新して「最後までよくやりきった。最高の勝ち方が出来た」と、自画自賛。
狙い所に寸分違わず打てる正確なショット。チャンスでもピンチでも、自信満々のパッティング。
内心は「ビクビクしていた」とは口では言うものの、実際には誰も寄せ付けない。横綱ゴルフが出来るのは、このオフの鍛錬のたまものだ。
4年連続の賞金王が途切れた昨シーズン。
「今となっては、獲れないで良かった」と、片山は振り返る。
最初は、それほどでもなかった。しかし、「ジワジワと悔しくなってきた」。
谷口徹に負けたことで火がついた。
それこそ「朝昼晩」。寝る間も惜しんでボールを打った。
「練習の取り組み方も、気合いも今まで以上」。
また、これまで以上に体をいじめ抜き、合間をぬって、積極的に海外の試合にも参戦。
絶好調で乗り込んだマスターズは、「調子が良すぎたために、かえって罠にハマった」と、自身2度目の予選落ちを喫したが、落胆はなかった。
「いつでも勝てる状態」で日本ツアーの開幕を迎え、「狙って獲った」自身2度目のプロ日本一の座だ。
プロ初優勝は、やはり群馬県で行われた98年のサンコーグランドサマーだった。
思い出の地で、再び栄冠を手にした片山は、「10年前に、僕がこうなることを誰も予想できなかったと思う」と、しみじみと言った。
当時、「ゴルフが出来るだけでも幸せだ」というほどの大病から奇跡的によみがえった男がいま、10年の時を経て、快挙達成を目前にしている。
大舞台でのぶっちぎり優勝は、ツアー通算24勝目。
永久シードが得られる通算25勝まで、あと1つ。
「35歳までに25勝」と日記にしたためたのは、十数年前。
もはや、夢の実現は時間の問題という局面に、次なる構想を新たにノートに書き留めたそうだが、「それはまだ秘密」と笑った。