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ダイヤモンドカップゴルフ 2011
小田孔明がぶっちぎりのツアー通算5勝目
強い気持ちで振り切った。過去4勝も、すべて逃げ切り。「3日目にトップに立ったら勝たないといけない」。信念を貫いた。14番で、今季自身の初イーグルが、とどめとなった。
右手前のラフから40ヤードの3打目がカップイン。「今年1個目がここで来るか、と」。振り下ろした右拳。それを合図に「藤田さんは崩れていった」。あとは誰にも陰さえ踏ませない。1年ぶりのツアー通算5勝目は4打差の圧勝だった。
自称「ミスター連覇」。過去4勝が2度とも大会連覇に、唯一の不満は「優勝カップが2個同じ」ということだった。「やっと3つ目をもらえた」と、32歳が無邪気に笑う。
3打差のトップに立った前日3日目。最終日は大雨の予報に思わず言った。
「・・・中止にならないかな」。
「それで優勝しても、75%の喜びしかない」と、厳しく咎めたのは大会4勝を誇る中嶋常幸。勝利の美酒は、どんな条件下も最後まで戦い抜いてこそ。
レインウェアは早々に脱いだ。実はスタートから気になっていた。「そのせいで、スイングが止まっている」。2番でティショットを右の林へ打ち込んで「もう、濡れてもいいや」と潔く、ひどい雨にも途切れることのなかった集中力は、座禅修行の成果だ。
3連覇をかけた今年の開幕戦は、打球事故でギャラリーに怪我を負わせたばかりか、予選落ち。「気持ちヘコんだ」。翌週のつるやオープンで、開幕前に訪れた。兵庫県・神戸市にある一王山十善寺は「僕のパワースポット」という。
暗闇の中で心を静め、ひたすらろうそくの火を見つめる。「今やるべきことが見えてくる」。怪我を負った方の回復を祈り、自らの成功を祈った。邪念が消えた。
「予選落ちしたらどうしようとか、考えることがなくなった」。集中力が高まった。
毎年、開幕前から「賞金王を狙う」と宣言してきた。しかし、昨年は5月にパットのイップスにかかり、夢と消えた。
5月に、わずか20センチのパットを外したのを機に手が動かなくなった。「勇太とか、いろんな人に相談しても皆、気持ちの問題だと」。悩みに悩み、笑顔も消えた。
しかし開眼のきっかけは、ほんの些細なことだった。10月の日本オープン。雨中の練習で気がついた。「パターヘッドの砂が、先っぽについている」。ネック寄りで打つように変えたら、たちまち回転が良くなった。「なんだ、これだけか」と気持ちが晴れた。
やはり、ちょうどこの時期にも座禅修行で「また外すかも知れない」との恐怖も去った。
「去年はそのあと、一度も予選落ちをしていない」。
復活のときを、待つばかりの状態だった。
今年の目標は「しれ〜っと勝つ」。思ったことを、何でも口にしてしまうと実現出来なかったときに、周囲から矢のような非難を浴びることに懲りたからだ。
「賞金王だって、なんだ言っててなれないじゃないか、と。あまり出しゃばると怒られるんス」。
1年ぶりの5勝目には自然と気持ちも高まるが、それでもやっぱり控えめに「世界ランクを上げて、世界での活躍を増やしたい」。勝ってなお、あいかわらず本人の理想は「毎週、何気なく、そーっと上位にいて勝ちまくる」ことだが、この屈強な体ではそれも無理?!
まして今回も、4打差のぶっちぎりVでは目立って目立って仕方ない。
石川遼が1年ぶりの予選落ちを喫した週末を盛り上げた。雨中の優勝争いにもかかわらず、今年新たに設置された立ち見席には満員の大ギャラリーに「遼くんもいないのに、こんなにたくさん応援してくださって、本当にありがとうございます!」と最後は大マジメに頭を下げて、笑いを誘った。。