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VanaH杯KBCオーガスタゴルフトーナメント 2012
山下和宏が3位タイ浮上
「試合になると、どうしてもアドレナリンが出たり、力が入って120%くらいで振っていないか?」。
5月に手に入れた念願のキャビティアイアンは、「ハーフショットしてもちゃんと止まってくれるのに」。
ずっと、メーカーにオーダーし続けていた。
「一番、簡単に打てるアイアンを作って下さい」。
アマチュアにもよく質問を受けることだ。
「どうしてプロはアマチュアに、いつも簡単なアイアンを勧めるのに、自分はマッスルバックとか、難しいのを使いたがるのか」。山下も同感だ。
「僕も分からない。僕みたいな球が上がりにくいプレーヤーでも、楽に上げることが出来るし、グリーンで球を止めることも出来るのに、なぜみんな使わないのか」。
そんな思いを詰め込んで出来上がってきたアイアンは、8番の試打で一発で「これで行きます。これで行くしかない」と、即決したほど惚れ込んだ一式だ。
この日は朝の練習場で、心に決めた。「今日はコースでフルショットはしない作戦」。それはクラブの利点を最大限に生かすためでもあった。
とはいえ「たまに、振ってしまって意志が弱くて情けない」。ときどき、つい気合いの入ったフルスイングをしてしまって苦笑いを浮かべる場面もあったが、おおむね作戦は成功だった。そしていよいよ最終ホールは「解禁!」。
ため込んでいた力を解き放った。9番のパー5は、残り199ヤードの6番アイアンを気持ちよく振り抜いた。
「それが思いのほか前に行ってくれて。最高のラインに乗ってくれた」と、右手前から3メートルのイーグルチャンスも気持ちよく沈めて“裏街道”のインスタートから一気に3位タイまで上がってきた。
2週間のオープンウィークで痛めた股関節も、すっかり完治。
「あとは行くだけ、やるだけ」と、爽やかな笑顔に闘志を秘める。
ある日、インターネットで読んだ女子プロゴルファーのフォン・シャンシャン選手の記事。
そこには状況に関係なく、自分が出せるだけの好スコアを出して勝つ、といったシャンシャン選手の意志の強さが綴られていた。
それにひきかえどんなに調子が良くても、つい回りに合わせてブレーキをかけてしまうところがある。
そんな自分を戒めた。
「回りを気にしてもしょうがない。調子が良いなら、行けるところまで行ったほうがいい」。
最終日の目標は、今日の自分を超えること。
この日を上回るスコアを出すこと。そういう強い気持ちで挑むこと。
「66より、もうちょっと行ける。明日はそう思ってプレーしようと思います」。
その先に、悲願のツアー初Vが待っている。