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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2007
谷口徹が有言実行の2週連続V
次週に全英オープンを控え、過密スケジュールも承知で今大会に出場すると決めたのは、夢にまで見たこのシーンを実現させたかったからにほかならない。
重たいカップを自由のきく左手でしっかりと持ち、力強い声で「ナイスプレー。おめでとう!」と言って下さった。「大変なご病気をされたのに、ここまで回復されて・・・」。
それだけでもう、胸が一杯になった。
ミスターの前で披露した優勝スピーチ。
チャンピオンのほうに、熱心に体を傾けて聞き入っておられる様子に、優勝争いとはまた違った緊張感があった。
手のひらにじっとりと滲む汗。ミスターの前で、失敗は許されない。
「主催者さんの名前とか、絶対に間違えたらいけないと思ったんです」。
慎重に、言葉を選びながら話した。
少年野球に興じた小学生時代。
当時の少年が誰でもそうだったように、谷口もプロ野球選手に憧れた。
特に、王・長嶋が目標だった。球団を超えて、圧倒的な存在がその2人だった。
しかし「体格に恵まれずに」やむなく断念。
「でも、諦めて正解でした」と笑う。
中学時代はテニス部に所属。同時に趣味で始めたゴルフにたちまち虜になって、同期に桑田・清原がいたPL学園高時代には、すでに意識していたプロの道。
もしあのまま無理に野球を続けていたら、今の自分はあっただろうか。
こんな瞬間を味わうことができただろうか。
「ミスターから表彰されるなんて、たとえ野球選手でも一生にあるかないか」。
たとえ別分野でもトップに立てたからこそ、味わえるこの瞬間。
それだけでも満足だったのに、表彰式のあとにしばらくミスターと談笑する時間が持てたのだ。
わずか数分間の間に、話題は多岐に及んだ。
先週、米大リーグのオールスター戦で史上初のランニング本塁打を記録したイチロー選手のこと、また更新された破格の契約金の話。高校時代のこと。そしてゴルフの話…。
中でも嬉しかったのは、ミスターからかけられたこんな称賛の言葉だ。
これが初対面だったにもかかわらず、「それにしても、谷口くんは昔から本当にパットが上手いね!」とミスターは言ったのだ。
「ウッズならまだしも、僕のことなんか今日初めて見るんだろうなと思ってたから」。
それどころか、ミスターは昨年まで、2年連続の平均パット1位の存在を知っていた。
「僕のことを知っていてくださった。それだけでも嬉しかったんです」。
興奮さめやらぬまま、自身2年ぶり6度目の全英オープンを迎える。
「・・・あそこで3週連続優勝、とはいかないけれど(笑)。余裕の予選通過を目指して頑張ってきます」と、ミスターと過ごした余韻を胸に旅立った。