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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2013
山下和宏も自宅通勤!
18番のパー5はグリーンの奥にそびえるスタジアム風の大スタンド。降り注ぐ拍手と歓声に、“山P”の爽やかスマイルがいっそう輝く。
その直前の17番で連続ボギーに「ちょっと、ちぐはぐな感じが出ていた」。嫌な空気を振り払って上がって来られた。これで「明日は前向きなゴルフをしていければいい」と、最終日の1番ティにも、ますます爽やかな笑顔で立てる。
前半の9ホールは、1番で4メートルのチャンスを外し、2番のパー5も獲れず、ひとつもスコアを動かせないまま折り返したが「ボードを見たら、他もアンダーパーはそれほど多くない」。
前日2日目は、スタート前にいきなりドライバーを変えると、フェアウェイキープ率も「今、人生の中で一番いい」と言えるぐらいに格段に上がり、ショットには自信があった。
パターも、今週から宮里藍選手が使っているのと同タイプのものに変えて、「ショートパットが良い入り方をしている」と、グリーン上にも死角は見当たらない。
そして、何より今年の開催コースだ。茨木カンツリー倶楽部は完璧な仕上がりに、ラフにさえ入れなければ「毎回ジュータンから打たせてもらっているみたい。まるで、誰かが手でボールを置いてくれたみたいな」。
いつでも最高のライから打てるから、「これでミスをしたら、自分の腕が悪い」と、諦めもつく。出身の大阪府高槻市の実家からでも、ほんの数十分の名門コースは「昔は来たことがなかった。敷居が高くて」。
それでも2005年には、当時はまだツアー外競技だったが、日本でもっとも古いオープン競技でもある関西オープンで優勝を飾り、2008年からはシード選手の常連となり、どんどんと知名度を上げていく中で、メンバーの方や日本ゴルフ協会の役員の方々からラウンドのお誘いも受けるようになり、大阪を代表するプロゴルファーとして、今や堂々と門をくぐれるようになった。
今週は山下も“自宅通勤”で、なおさらリラックスして試合に臨める。この日は、家族の姿は見えなかったが「今日は嫁は、晩ご飯の買い物に行っておくから、と」。妻の献身にもますます燃える。
5歳と3歳の一男一女の父の趣味は「子どもと遊ぶこと」。帰宅するなり「ゲームをしよう」とすり寄ってくる我が子に目を細めつつ、団らんの居間でふつふつと闘志をみなぎらす。
きっと最終日こそ家族全員集合。「明日は、やりますよ!」と父の威厳で初V宣言。「ちょっと強がり言っとこう」と悲願達成にむけて、自らの背中を押した。