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カシオワールドオープン 2016
谷口徹が不本意な、今季最終戦
ツアー通算19勝。02、07年に2度の賞金王。これまで19年間守ってきた賞金シードも、この最終戦で今季9度目の予選落ち(棄権1)を喫して来期は秋の入れ替え(フォールシャッフル)に組み込まれる上位61人から75人の“第二枠”以上はもはや望めず、自己ワーストの結末に、ベテランの目には悔し涙がにじんでいるようにも見えた。
年齢を経ても衰えない体。若手にも負けない飛距離。パワーアップを期して、2年前から始めた筋トレ。
「今年は腰も痛くない」。おかげでこのシーズン最終戦でも、痛いところはどこもない。
気持ちも若返った。やればやるほど力も筋肉もついて、自信もついた。「トレーニングが好きになっていった」。
味をしめ、肉体改造にますますのめり込んだが「やり過ぎもあったかもしれない」。
せっかく鍛えた肉体も、スイングにおいては活かされなかった。
「優勝したいから。上を目指すには、いろんな努力をしなければいけないと思ったからトレーニングをやった。でもそれが、今年はうまくいかなかった」。
今年48歳の一念発起は失敗に終わった。
「パワーがついたから、パワーを活かしたスイングをと思ったのが、ボールコントロールがうまくいかなくなった。アイアンは左に行くようになり、ドライバーも悪くなった」。
あれほど安定感を誇ったスイングも、バランスを崩してあれほど強気の選手が、コースで自信を失った。
「試合中に100%の自信で臨めないと、勝てない」。
ひきかえ、目下賞金1位の池田。
「ストレートにがんがんピンを狙っていく。今は、ああいう選手と回っても勝てないと思う」。
筋トレがもたらした弊害に気づいた秋以降、「精度を高めながら、自分の持ち味でやっていかないと厳しい」と、急ピッチの修正に取り組んできたが、間に合わなかった。
この2日間は、同組で回った昨年覇者をずっと見ていた。
黄重坤(ハンジュンゴン)のスイング。
「バランスとか、タイミングとか。ジュンゴンのようにゆったり大きく振るようにしたら、良い感じになってきた。最後バーディ、バーディ、バーディで上がれた」と、せめて今年最後の3ホールの3連続バーディと、週末にパパが帰ってくると、「一緒に鬼ごっこが出来る」と喜んでくれる愛娘たち。
「子どもたちにはプラスでしたね。日曜日は、朝9時には公園に行ってます」。
谷口には2012年に制した日本プロの5年シードが、まだ1年残っている。「この世界は結果がすべて。来年はチャンスがもう1回残っているので、そこに向けてやっていきたい」。
少し早めに来たオフこそ最愛の家族に癒やされながら、来シーズンの復活を期す。