谷口サンタが大事なプレゼントを忘れもの。「しまった! 家の玄関に、置いてきてしまった」。気付いたのは会場に到着したあと。「歳取るとあかんね…」と、51歳がしょんぼり。
「渋野さんのボールもあったのに…」と、猛省。
この日、子どもたちへのクリスマスプレゼントにするはずだった。
この1年、今日この日のためにコツコツと、選手仲間から集めて回ってきたサインボールはつい先日、今回は初のシニア代表として、7年ぶり4度目の出場を果たした男女シニアの対抗戦「日立3ツアーズ選手権」で、前後半戦共に対戦したシブコさんにもおねだり。
「いいですよ〜、って。めっちゃ一杯くれたのに…。俺ってアホ」。
せめて子どもたちには今をときめくシンデレラと初ラウンドした際の土産話を。
「渋野さんは、去年プロテストに通ってたった1年で、シード獲って、メジャー勝って、賞金ランク2位で。あんな選手、見たことない。ショットも、パットも本当に上手かった」。
同大会で、シブコさんとペアを組んだ女王も凄かった。
「鈴木愛ちゃんは、特にパット。全部入る雰囲気やった」とこの日は講義のあとに、外で対戦形式のレッスン会では目に焼き付けてきたばかりの愛さんのルーティンをモノマネしてみせるなど、子どもたちの関心を誘った。
毎クリスマスのこの時期のライフワークにしている。谷口徹が今年も12月25日に、出身の奈良県にあるナパラゴルフクラブ一本松コースで行われた「冬季ジュニアゴルフスクール」にボランティア参加。
主宰の杉本真美プロによると、今年は02年の第1回から数えてもっとも多い60人の生徒を集めた。
大所帯の助っ人として、今年9月の「パナソニックオープン」で4年ぶりの7勝目を飾った‟一番弟子”の武藤俊憲を伴い2人がかりの濃密レッスンを繰り広げた。
子ども相手に勝った、負けたと悔しがり、「また小学生相手に本気になって…。あれが谷口さんの強さ」ともう長い付き合いの武藤も”師匠”の執念に、改めて舌を巻いた。
子どもたちの前でもレギュラーツアーへのあくなきこだわりを見せた。
今年は、2年目のシニアツアーで公式戦「日本シニアオープン」を制したものの、レギュラーツアーでは賞金シード落ちを喫して最終戦で悔し涙。
「あれは…泣くつもりはなかったのに、メディアの人に泣かされた」と照れ隠しに言い訳しながら「レギュラーツアーはシニアにない魅力がたくさんある。まだまだやりたいこともある。自分の半分くらいの歳の選手とプレーするのは楽しい。年齢には関係なく、これからも自分にできることをやっていく」。
この日のレッスン会もそうだが1年ぶりに再会すると、すっかり大人の顔立ちで「来年は国体に出ます」などと報告しに来てくれる子がいたり、若い人たちの成長を見ることもベテランの楽しみだ。
「渋野さんもまだ粗削りな分、伸びしろがたくさんあると感じた。これからが楽しみ」。
シンデレラの成長を、この目で見届けるためにもまだまだ枯れるわけにはいかない。
来季の目標は、シニアでの2勝目ではなくあくまでも次の21勝目。
「来年もレギュラーツアーで頑張る」。
来季は”主戦場”にも忘れ物なし。
聖なる日に、谷口サンタが約束した。